野球&球場はこうして楽しめ! 野球マニアの生態を活き活きと描き出す「球場満喫」マンガ
公開日:2017/5/10
2017年プロ野球のペナントレースが始まった。セ・リーグは昨年に続いて広島カープが好調。一方のパ・リーグでは、昨年優勝した日本ハムファイターズの打線が振るわず順位を落としている。とはいえ、シーズンはまだ序盤。ひいきにしている球団を応援するため、球場での試合観戦を計画している人も多いことだろう。
漫画『球場三食(1)』(渡辺保裕/講談社)は、狂おしいまでの野球愛が詰まった球場バラエティ。現在も『アフタヌーン』で連載中だ。全国各地にある野球場の成り立ちや見どころ、B級グルメにビールの良し悪しなど……マニアックな解説の数々から、球場で野球を観戦することの悦びや興奮が、ひしひしと伝わってくる。
主人公・日下昌大は、プロ野球12球団のファンクラブに入り全国の野球場を巡る、筋金入りの野球好き(実は近鉄ファンであることが第5幕で明らかに)。あふれんばかりの野球愛ゆえ、彼には次のような「自分だけの公認野球規則」がある。
球場に到着した際はできる限り正面から向き合うようにしている
野球観戦日の食事は三食すべて球場内で調達する
一度座った席はゲーム終了まで変えない
あなたは、この野球規則にどこまで共感できるだろうか。あるいはどの程度「めんどくせっ」と思うだろうか。ちなみに私は、理解できるが実行はできない(特に2つ目)。極め付きは、第1幕での以下のセリフ。
「球場への入場料は野球を愛していることの証明だ」
これぞまさしく、オタクの本分である。たとえある人にとって「カネの無駄」でも、我々オタク気質の人種にとっては崇高な出費なのだ。この感覚は、きっと多くの人に理解してもらえると思うのだけれど、いかがだろうか。
球場での楽しみ方に関する描写は、主人公の野球規則に負けず劣らずマニアックだ。グラウンドの土や芝生の美しさを10段階評価したり、球場メシは朝昼晩で事前に“打線”を組んでいたり、ビールの価格や品質、売り子さんのレベルを比較したり……。また、荷物は45リットルのゴミ袋に入れてイスの下へ、といった実践的な豆知識やうんちくも多く、じわじわ笑える。
本作は、球場紹介がメイン。それゆえ、プロ野球は全12球団だから連載は12話で完結するのでは……と思いきや、そうではないらしい。というのも、巻末の作者インタビューで、二軍本拠地や地方球場、そして過去に存在した球場も紹介したい旨が語られているからだ。事実、第5幕の「藤井寺球場」の回では、球場近辺の街の紹介が主軸になっている。球場紹介一辺倒でない、切り口の幅にも注目していきたい。2巻は2017年5月23日(火)発売予定。
文=上原純(Office Ti+)