読めばお茶が100倍おいしくなる! 50年以上研究し続ける“お茶博士”が教える、お茶の秘密
公開日:2017/5/16
『お茶の科学「色・香り・味」を生み出す茶葉のひみつ(ブルーバックス)』(大森正司/講談社)は、「お茶を科学的に分析する」ことで、お茶好きをもっとお茶好きにする、お茶尽くしの新書である。
著者はお茶の科学的な薬効やルーツ、伝統食品と健康に関する科学的・文化的な背景などを50年以上の長きにわたり研究しているというお茶のスペシャリスト。よって本書は情報の信頼性・最新性がピカイチだ。
そもそもみなさん。緑茶、紅茶、ウーロン茶は、元は同じ茶葉からできていることはご存じだろうか? もちろん、品種によってそれぞれに適した茶葉があるので、静岡の茶畑の葉を使用して、全世界の紅茶を作っているわけではない。だが、味はともかく、理論上はそれも可能となる。
つまり緑茶、紅茶、ウーロン茶は、「茶葉の製法の違い」により、風味のまったく異なる飲み物になっているだけなのだ。
詳しく説明すると、緑茶は茶葉を摘んだあとに蒸気をかけ、茶葉の中の酸化酵素を不活性化して緑のままに保っている非発酵茶。紅茶は摘んだ葉を揉み(専門用語で《揉捻》という)、茶葉中の酸化酵素が茶の成分のカテキンを酸化させ、茶色に変色した発酵茶。ウーロン茶はそのカテキンの酸化を途中で止めた半発酵茶である。(※ただし、お茶における「発酵」は厳密にいうと科学的な「発酵」という現象ではないらしいので注意。詳しくは本書を)。
本書はこういった「お茶の基本知識」から、「緑茶の種類」(玉露、煎茶、番茶、ほうじ茶etc.)、「紅茶の種類」(ダージリン、アッサム、アールグレイetc.)、「ウーロン茶の種類」(凍頂烏龍、水仙、龍井茶etc.)などの「聞いたことはあるけど、違いは説明できない」お茶の種類について、また、お茶と人類の歴史やそのルーツ、茶葉がお茶になるまでの「製造方法」、さらに「お茶の美味しさは何で決まるのか?」といった科学的な知見や、「美味しい淹れ方」レクチャー、加えて健康面への効能といった幅広い内容を網羅している。
本書の内容は既存の「お茶が趣味です」程度の書き手の書籍に比べ、かなり濃厚だと思う。それゆえに、専門的な用語が並ぶ時や科学的な知見が強く語られる際は、やや難しいと感じる箇所もあるのだが、反対に言えば「この一冊があれば、お茶に関する本はもう必要ない」と思えるほどの、充実した内容になっている。
さて、そんな本書の内容を少しご紹介。
「お茶」の味はうまみ、渋み、苦み、ほんの少しの甘みであり、その構成成分はアミノ酸(うまみ)、カテキン(渋み)、カフェイン(苦み)の3つ。うま味のアミノ酸がもっとも多いのは緑茶で、紅茶の味を決めているのは主に渋みのカテキン。そしてウーロン茶は3成分とも緑茶と紅茶より少ないとか。
お茶と言えば「カフェイン」。最近ではすっかり「悪者」のようになり、敬遠している方もいるのではないだろうか。だが、過剰に摂取することがなければ、身体にいい効果が多く期待できるという。
カフェインには「覚醒、興奮、利尿作用があるので、日中の眠気を抑えて集中力を高め、二日酔いの時は頭をスッキリ」させる効果がある。また疲労回復や脂肪の燃焼にも効果的らしいので、過度にカフェインを気にするのではなく、適度に日々の生活に取り入れるといいだろう。
また、カテキンには「抗酸化作用」や「アレルギー症状の抑制」など、アミノ酸には「リラックス効果」「ストレス軽減効果」も。その他、お茶にはビタミンC、Aや食物繊維も含まれているので、文句なしの健康飲料なのだ。
美味しくて健康的。これは飲まない手はない。本書の「知識」と「淹れ方」を参考に、本当に美味しいお茶を堪能してみてはいかがだろうか。
文=雨野裾