“最後の任侠ヤクザ”と言われた男、山口組最高幹部・竹中武とは? 本人の肉声ビデオと最新証言で「新事実」が明らかに
更新日:2017/6/12
日本最大の広域暴力団、山口組に分裂騒動が続いている。2015年8月に神戸山口組が分派し、今年4月には、神戸山口組からの離脱組が新たに「任侠団体山口組」を立ち上げた。注目すべきは、あえて「任侠」を組織名に冠した、新組織の今後の動向だ。なぜならこの新組織はその目標を、「ヤクザの原点である任侠道に立ち返り、反社会組織というレッテルからの脱却を目指す」と公言したからである。
ではいったい、「任侠ヤクザ」とはどんな人物像なのか。それを教えてくれるのが、“最後の任侠ヤクザ”とも言われる竹中武の生涯を、初公開となる本人の肉声ビデオと最新証言でたどった本格ノンフィクション『「ごじゃ」の一分 竹中武 最後の任侠ヤクザ』(牧村康正/講談社)だ。山口組最高幹部だった竹中武は、兄・竹中正久(山口組四代目組長)が殺された「山一抗争」の政治決着を嫌って山口組を離脱。山口組を誰より愛しながらも敵に回し、孤立無援で闘い、そしてついに敗れなかった。長いものに巻かれず、堅気を泣かさず、金儲けが下手だった武は、「こんな生き方しかでけへんのや」と時代遅れの頑固さを自嘲し、ヤクザ仲間にさえ疎まれることを承知で「筋」にこだわり続けた。タイトルにある「ごじゃ」とは、播州弁で「利害をかえりみない一徹者」の意だ。
竹中武の生涯を振り返った時、山口組の正史に、その名が銘記されるかどうかは定かでない。歴史には残らず、記憶に残るヤクザ―それが竹中武の宿命だったとも言える。
本書は「山一抗争」「宅見暗殺」「五代目交代劇」「中野会問題」「二代目竹中組」などの隠された真相にも迫る。
著者:牧村康正(まきむら・やすまさ)
実話誌編集者として山口組などの裏社会を20年にわたり取材。著書に2016年講談社ノンフィクション賞最終候補作となった『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』(山田哲久氏との共著、講談社刊)がある。