「団体行動が嫌い」黒メガネにヒゲ面の父親が、3年間PTA会長を務めた顛末とは?
更新日:2017/9/11
“PTA”と聞くと、どういうイメージを思い浮かべるだろうか。「面倒くさそう」「できれば避けたい」「やりたくないけど、やらなきゃいけないんでしょ」などと、マイナスのイメージがつきまとう。しかも、“PTA会長”だったらどうだろうか。なんだか更に、「人をまとめるなんて無理」「自分の仕事だってあるのに時間を取られそう」と漠然と「大変そう」というイメージが固まりそうだ。
実際、“PTA”って何をしているのか? 経験のある方も“PTA”の暗黙ルール、常識は各学校によって異なることご存じだろうか? 自分の子どもが通う学校のPTAルールは、隣の市の学校も同じとは限らないのだ。『ある日うっかりPTA』(KADOKAWA)の著者・杉江松恋氏は、本書の中で、「PTAの規則というのは学校によってまちまちで、統一のルールというものはない(PTAの常識その1)。全国組織というものさえ、本当はないのである」「基本的にPTAは学校ごとに独立した組織(PTAの常識その2)で、戦国時代の大名たちがそれぞれに自分の領地を勝手に運営していたことに近いものと考えてください」と記している。
そんな、実際に運営に携わってみないとわからない知られざる“PTAの常識”が、3年間PTA会長を務めた体験談をもとに書かれている。
著者の杉江氏は、フリーライターで金髪、ヒゲ、サングラス。このキーワードだけを並べると「まさにPTA会長に相応しいお方ですね!」とはっきり言えないかもしれない。確かに第一印象は大事だけれど、肩書きや見た目に惑わされてはいけない。自身は「おっちょこちょいだったからPTA会長になった」と書いているが、「自分の子どもが楽しく学校生活を送れるようにどうすることが一番良いのか」というぶれない軸があったから、周りの役員もついてきたという。
杉江氏が当時、掲げた裏スローガンは「がんばらない、をがんばろう」。
「人間、できないことを無理してやろうとすると、自分を責めたり、他人を非難したりしたくなっちゃいますよね。それだと1年間長続きしませんから、どうしてもやらなくちゃいけないことはがんばるけど、努力しても駄目そう、とか、ここで無理するよりは他のところで力を使ったほうがいいかも、とか思ったことは、人間関係をぎすぎすさせてまで、やることはない、という考え方です」3年間、杉江氏のこの考え方は裏スローガンとして役員の心に浸透していった。
だが当然、様々な人間が集まるので、ごたごたは起こる。「自分がPTAを辞めれば丸く収まるなら辞めたいですが、任期中に辞めていいとはどこにも書いていない」と訴えてくる人もいたという。裏スローガンを忘れてしまうほど、目の前のことでいっぱいになってしまっても誰かが思い出させてあげることができれば、心のすりへり方が少しは変わったかもしれない。“PTA“も社会の縮図の1つだったようだ。
文=大石百合奈