ダ・ヴィンチ本誌で、鳥飼茜のマンガ連載『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』スタート! ■記念対談(前編)岸田繁(くるり)×鳥飼茜
更新日:2017/6/7
『交響曲第一番』は僕のやりたい音楽
鳥飼 新しいCD『岸田繁「交響曲第一番」初演』、聴かせていただきました! あまりクラシックに触れてこなかったんですけど、これはただただかっこいいと思いました。美しいというよりは、めっちゃかっこいい。
岸田 ありがとうございます。ああ、今日来てよかった(笑)。最近、女性にかっこいいと言われるのが生きがいのように感じるので(笑)。
鳥飼 くるりの曲って、ほんまにヤバくて聴けないやつ、たくさんあるんですよ。イントロかかっただけで、もう泣いちゃうみたいな。年齢のせいも多分あって、19歳くらいの頃は人生が濃縮されたように感じていて、毎日同じ曲、『ワールズエンド・スーパーノヴァ』とかずーっと聴いて泣いていました。でも、もしかしたらクラシックって、そういうふうに一人で向き合うものじゃないのかなと。それで昨日、アシスタントさんたちと一緒に、私が持っている一番いいBOSEのスピーカーで聴いてみたんです。
岸田 マジですか。嫌がらせじゃないですか(笑)。
鳥飼 とんでもない。全員くるりのすごいファンなんです。そしたらツルさんというアシさんが、「クラシック好きなんですけど、前からもうちょっと心に寄り添ってくれないかなと思っていたんです。それが、この『交響曲第一番』にはあります」と教えてくれて、なるほど!と。それと、音が飛び跳ねていて楽しいって。
岸田 『じごガー』で、中島みゆきさんの『ファイト!』を聴きながら歌いながら大号泣するシーン、僕はとても好きなんです。あれを見て、鳥飼さんってああいうふうに音楽と付き合う方なんやろなと思ったんですね。
鳥飼 その通りです。
岸田 でもね、僕はあれできないんです。人生でほんの2~3回くらいしか経験がない。多くの人が僕らの音楽をそうやって聴いてくださったり、「人生が変わりました」とおっしゃってくださったりする。でも僕自身は、音楽でそれはないんです。
鳥飼 すごい。パラドックスみたいですね。
岸田 そう、パラドックス。だけどマンガではそれがあるんです、ほんまに。
鳥飼 私もマンガではないんです。
岸田 作るのは好きなんですよね? そういうことなんやろうなと思いました。
鳥飼 『交響曲第一番』は、みんなで聴くものなんやろうなと思いました。音楽って、そもそも昔は宮廷や教会に集まって聴くしかなかったわけじゃないですか。『HOW TO GO』で泣いちゃうみたいな、音楽への向き合い方とは全然違う。その分、出せる世界の構造的な厚みや迫力は桁外れだと思います。だから、『交響曲第一番』では少し音楽の聴かれ方を変えたかったのかなと。
岸田 というよりは、あれって僕が音楽でほんまに一番やりたいことなんです。たくさんの人に聴いてほしいとかも、まったく考えませんでした。文学は全然わかりませんけど、たとえば、谷崎潤一郎の「その表現、わからへんよ」という究極にマニアックな文章ありますよね。『交響曲第一番』は、自分自身のそこだけを突き詰めて作ったような感じです。
鳥飼 オタク、みたいな。
岸田 そうですね。自分自身の“垢太郎”ですね。ほんまにそれなんです。くるりでやっていることは、音楽やお客さん、自分、バンド、全部を集めた社会性の塊なんです。でも、『交響曲第一番』はもっと精神年齢が低いところにある。湧いて出たけど名前がついていない、そういったものだけでできているんです。
岸田繁 作曲による初の交響曲の世界初演がCD化
クラシックを愛する岸田が、京都市交響楽団の依頼を受け約1年半をかけて初めて本格的なオーケストラ作品を完成させた。2016年に広上淳一指揮のもと初演され、その模様を完全収録。50分を超える『交響曲第一番』は圧巻。パイオニアであり続ける岸田が、また新たな音楽の扉を開いた。
11年以上続く、岸田繁の大人気エッセイ連載が単行本化
『ROCKIN’ON JAPAN』で2006年から続くエッセイ連載がついに書籍化された。バンド、京都、電車など身近なことから、真剣な音楽論、掌編小説まで、極めて多彩な題材が綴られ、岸田の思考が覗き見られる一冊。あとがきには総編集長とのスペシャル対談も収録。
性の不平等に苦しみ、愛と欲望の間で揺れる女と男
『24歳の高校教師・美鈴は、友人・美奈子の婚約者・早藤にレイプされ続けていた。心を閉ざして生きていたが、逆レイプされた経験のある男子生徒・新妻と、互いに特別な感情を抱くようになる。一方、美奈子は早藤の子どもを妊娠し、早藤もどす黒い感情に押しつぶされていた。
女3人のおしゃべりが止まらない。
共感度120%の同居物語、ついに完結!
一軒家をシェアして暮らす女3人。バツイチ・シングルマザーの加南、彼氏ナシの真面目OL・悠里、超モテ子な奈央。男子のかわいがられ願望、世間の“母は恋するな”圧力、男女の不毛な価値観戦争など、妙齢女性のモヤりを徹底議論。そこへ、加南が彼氏から同居を申し込まれ……。
取材・文=松井美緒 写真=冨永智子
後編<6月8日公開予定>につづく