球史に残る2010年「史上最大の下剋上」の裏側とは!? 元千葉ロッテ・里崎智也氏インタビュー【後編】
公開日:2017/6/7
1999年から2014年まで、15年間千葉ロッテマリーンズ一筋で活躍した里崎智也氏。厳しいプロ野球の世界で光り輝くことができたのは『エリートの倒し方 天才じゃなくても世界一になれた僕の思考術50』(里崎智也/飛鳥新社)で語られている“里崎流思考術”が要因であったようだ。後編では現役時代のライバルについて。そして2010年にシーズン3位から劇的な優勝を遂げた「史上最大の下剋上」の裏話などについて語ってもらった。
◎「準備」段階は人を見て、「勝負」のときは人を見ない
――現役時代、ライバルはいましたか?
里崎:ライバルは「こうなりたい」っていう自分自身の理想ですね。他の人よりも僕の理想の方が凄いんですよ(笑)。そして、一生追い付くことがない。だからずっと納得できなくて、一生努力できるんです。
――それでも、自分のチーム内や他球団にも素晴らしい選手はいましたよね? 気にはならなかったですか?
里崎:気にならないといえばウソになります。でも気にしても、その選手が頑張ることも落ちていくこともどうすることもできないですよね。それに他人を気にするということは、そいつに負けてるっていうことを自覚してるのと一緒。だから「気になる」じゃなくて「気にしない」なんです。まぁ、もともと人に負けてるなんて思ってないですけど(笑)。
――里崎さんの絶対的な自信はどこから出てくるんですか?
里崎:能力ですね。とび職は高い所でも緊張しないですよね? それは高い所でも作業ができるスキルがあるから。だから能力を手に入れるために練習すべき。能力があって初めて、準備したことが本番で結果になって、成功体験が自信につながる。これを繰り返すことで自信がもっと大きくなるんです。
――その自信が2010年の「最高の下剋上を見せる!」という名言につながるんですね!
里崎:そう言った方が盛り上がるじゃないですか(笑)。言ったもん勝ちです。
――あれ(笑)? できなかったらどうしようって考えませんでした?
里崎:いやいや、できなかったところで「お前、日本一になれなかったじゃないか」って誰からも言われないですもん。でも、できたら「すごい」ってなりますよね。
――なるほど。里崎さんは人をよく見ていますよね。
里崎:キャッチャーだから、職業病かもしれないですね。人を観察するのも好きなんですよ。
――でも、いざという時は人を見ないし、気にしない。人との距離感が絶妙だなと思うのですが…。
里崎:「準備」の段階は人をよく見て、「勝負」のときは人を見ないです。準備では相手が何をしてほしいのか、どういうことをされたくないのかを考えます。後はマネをしたらいけないという人を見つけたら、反面教師にして勉強するようにしました。勝負に出るときは、勉強したことを出すだけ。人の評価は…まぁ、気にならないはウソですけど僕の範疇じゃないので気にしないですね。自分がいいと思ったことをやり続けます。
――最後に読者へのメッセージをお願いします!
里崎:「どうせこれまで読んだビジネス書と一緒なんでしょ」と思ったら大間違い。僕がプロ野球という場所で実践した、誰でもできることを書きました。しかも理想論ではなく、現実を書いてるだけ。後は読んでみて、「自分だったらこうじゃないかな?」と考えてみてほしいです。それをきっかけに自分だけの“信念”を作ってください!
里崎氏の言葉は一見突拍子もないことを言っているように感じる。しかし、厳しいプロ野球を戦い抜いた“経験”に裏打ちされた“里崎流思考術”は、新しい発見を与えてくれるはずだ。本書はビジネス書であるが、読みやすいためスポーツに打ち込む小・中・高校生が1日1章ずつ読んで実践してもいいだろう。そして、そこから未来のプロ野球選手が誕生することを切に願う。
文=冴島友貴