あと何杯お酒が呑めるのか?【『ダ・ヴィンチ』7月号「お酒と本。」特集番外編】
更新日:2017/6/6
編集K
編集Kです。
本日2017年6月4日は今年初の休肝日(…にしたい!)。
そう願いながらこちらの原稿を書いております。
今月は「お酒と本」の特集です。
この仕事をしていると、「読書時間をどうやって確保しているのか」について聞かれることがとても多い。
そもそも私の読書量は少ない方だと自分では思っていて(身の回りに活字中毒改造ニンゲンみたいなのが溢れかえっていることもあり)、恥じらいながらそう打ち明けると、「またまたー!」「この嘘つきーー!」なんて愛のある言葉をかけて頂くことが大半だから、もう一つだけ私の残念な話をしておく。
つい先日、まさにこの特集を校了し終えてからのこと。
ぎゅうぎゅう詰めの京葉線で舞浜を通り過ぎ、千葉の幕張へと足を運んだ。
そこで異業種の方による学生向けの講演を聞く機会があって、このヒトの世には思いを形にする面白い仕事が沢山あるのだなぁ、目を輝かせて話す講師たちの姿を見てそう思ったのだった。
終演後には学生に並んで、講師に質問をしに行ったほどだ。
ライブ業界に携わる裏方さんたちを集めたイベントで、お客さんから見えない分だけ演者を始めとする関係者の信頼を舞台の裏側で得ているんですね(彼らにスポットライトを当てた主催者の目のつけどころも素晴らしかった)。
その帰り道に角ハイボールなんかを飲んでいると、「じゃあ自分はどうなんだ!」となるわけで。ガラガラの京葉線に揺られながら、アルコールが染みわたる頭で考えてみた。
編集者という仕事には、いわゆる世間とのイメージ・ギャップがそれなりにあるような気がしていて、突き詰めれば事務方。
おおよその作業はルーティン化している。
その中で自分が気になる企画を立てたり、ご縁があった著者と単行本を作るなどして、大小の波を作って仕事している(と私は考えている)のだが、読書について言えばその波間を縫って、ということになる。
仕事の中では誰かと組んで「原稿がー」とか「デザインがー」とか気を揉んでいることが多いから、本を読みながら一人で過ごす時間は意外と得難いものなのかもしれない。
でもそれだと冒頭の問いに対する答えとして面白くないから、「居酒屋で本を読んだりすることもある」というと「そんなの頭入ってこなくないですか!?」「かっこつけてるんですよね!?」と言われ続けて……もう7年くらいになる。
あぁ、目の回るような社会人生活よ。
ようするにお酒も本も趣味なわけで、それを組み合わせているだけなのだが、よっぽど珍しいのか今月号では北尾トロさんに連載のネタにまでされてしまった(ちなみに北尾さんはほぼ下戸である)。
私がよくやるのは、帰宅前に最寄り駅にある古びた居酒屋のカウンターで食事がてら酒を飲み、本をよむ。さらに自宅に戻って酒を(以下略)。
お店は決まったところがあって、ビールをジョッキ一杯から入って日本酒を2合。
つまみは刺し身やらポテトサラダやら、どこにでも定番や旬のものから2品ほど。
ちびちびやりながら買ってきた本を読んだり(軽めの小説か人文書が多い)、ボーっとしたりして、軽く済ませて帰ります。
女将とは注文のやり取りがあるだけで、きっちりと放っておいてくれるし、混んできたらすぐにお会計。
マンガなら2冊くらいは読めるけど、文字ものは数十ページがいいところ。
あとは家で同じことをします。
もちろん通勤電車でも本は読むし、深夜のオフィスでお酒を飲むことがないとは言っていない。
そんな私が「お酒と本」をテーマに特集を作ることになった。
『ダ・ヴィンチ』は女性読者が多いから、食に関する特集を担当するのが居酒屋を主戦場とする私一人でいいのか不安ではあったので、今回は『散歩の達人』や『LDK』で活躍するライターの増山かおりさんに全面的にバックアップして頂いた。
急ピッチで制作を進めたこともあり、ガチャガチャした誌面になったような気がするが、個人的には『酒場放浪記』吉田類さんに酒にまつわる原体験(=もはや人生哲学)を伺えたことがもう……。
と、ここまでは酒好きの視点で書いてきたが、今回の特集にはほぼ下戸の小説家・似鳥鶏さんや光浦靖子さんらにもご登場頂き、“飲めない人”の視点も織り込んでみた。
「お酒と本」というテーマに引っかかる記事を、とにかくたくさん詰め込んだ特集になっておりますので、お好きな飲み物をかたわらにじっくりご一読頂けると嬉しいです。