鈴木亮平主演でドラマ化決定!食いしん坊・宮沢賢治の青春時代を描いた食マンガ

マンガ

更新日:2017/7/3

『宮沢賢治の食卓』(魚乃目三太/少年画報社)

 相変わらず高い人気を誇る食マンガ。最近では従来の「対決もの」や「薀蓄もの」に加え、斬新な切り口をもった異色作が次々に生まれている。4月10日に発売された『宮沢賢治の食卓』(魚乃目三太/少年画報社)も、そんな新機軸の食マンガとして注目したい作品だ。『しあわせゴハン』など多くの食マンガで知られる作者が今回挑んだのは、宮沢賢治×食という切り口。日本を代表する童話作家・詩人の青春時代を、伝記的事実を踏まえつつ、彼が愛したいくつもの食べ物とともに描いている。

 代表作「雨ニモマケズ」の影響で禁欲的なイメージが強い賢治だが、実はお洒落で新しい物好き、仕事が休みになると上京して文具を購入したり、クラシックのレコードを集めたりする当時としてはかなりモダンな青年だった。そのうえ冗談が好きでモノマネも上手。本作を読んでいるとこれまで抱いていた宮沢賢治像がどんどん更新されてゆく。作者が描こうとしたのは聖人・宮沢賢治ではなく、私たちとあまり変わらない、喜怒哀楽に溢れた人間・宮沢賢治なのだ。

 農学校の教師をしていた20代の賢治が、生徒たちに全力で伝えようとしたこと。それは毎日を楽しむということだった。勉強だって仕事だって、工夫次第で生活はいくらでも楽しくできる。その根底にあったのが食べるという行為。だから賢治はいつも美味しそうにご飯を食べるし、弱っている人にはたらふくご馳走する。

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 学校を辞めてゆく教え子と食べた「鳥南蛮そば」、上京して出会った西洋の味「ハヤシライス」、農学校の計画登山にいつも持参した「食パン」、賢治の好物としてはもっとも有名な「サイダーと天ぷらそば」。ここに取り上げられる約10品は、どれも賢治のあたたかな人柄を伝え、文学に打ち込んだ青春時代を生き生きと蘇らせる。妹トシとの死別や、悲しい結末を迎えた大畠ヤス子との恋も「アイスクリーム」「焼きりんご」という食べ物を絡めることでより印象的なものになった。

 それにしても本作で描かれる食べ物の美味しそうなことといったら! さすがは食マンガの旗手、魚乃目三太。好物をほおばる賢治の嬉しそうな表情を見ていると、こっちまでお腹が空いてくる。宮沢賢治×食というこれまでない切り口は、食マンガとしても人間ドラマとしても大成功だったといえるだろう。

 なお、本作は鈴木亮平主演でドラマ化が決定。『連続ドラマW 宮沢賢治の食卓』として、6月17日(土)夜10時よりWOWOWで毎週放映される(全5回/第1話無料放送)。エネルギッシュで涙もろい原作版の賢治が、実写ではどう表現されているのか。“飯テロ”になるであろう毎回の食事シーンとあわせて楽しみなところだ。

文=朝宮運河


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