なぜ波瑠を起用? 生まれ変わった生活情報誌『saita』で、今の暮らしをアップデート! 【新編集長インタビュー前編】
更新日:2017/6/7
インターネットによる情報収集が当たり前の今、雑誌の役割が問われている。なかでも女性誌市場は競合が多く、他誌との差別化やネット媒体との共存のため試行錯誤している雑誌も多い。
そんななか、「ママを楽しむおしゃれ生活情報誌」をキャッチフレーズに20〜30代のママ向けの実用的な情報を発信してきた『saita』が、4月号から大幅にリニューアルした。一部ニュースサイトでは「脱ママ誌」宣言ともいわれたその大変革の先に見据えている雑誌の未来とは? 新編集長の若杉美奈子さんに話を伺った。
――『saita』は1995年に創刊して、この22年の間に何度かリニューアルをしています。でも今回のリニューアルはスタッフに書籍編集者を起用するなど、今までとは違う戦略や目的がありそうですね。
若杉美奈子さん(以下、若杉) 『saita』は生活情報誌として創刊しました。そのあと月2回刊になり、ファッション誌にリニューアルして月刊に戻り、そのあとママ誌になったんですね。それから10年ほどはママ誌として定着していました。でも時代が変わって専業主婦が減少し、働く主婦が増え、少子化の影響でママ人口自体が少なくなってきています。5年後、10年後を見据えて雑誌として生き残っていくためには、もっと読者層の多い市場に入っていく必要があるというのが、リニューアルにいたった大きな理由です。
読者をターゲットは、あえて年齢層でくくると20代から40代ぐらいまで。ただ今の時代、雑誌を買う人というのは、年代では区切れないと思っています。20歳も60歳も、同じプチプラのファッションを自己流で楽しんでいるように、雑誌も自分が求めているものが載っていれば年齢に関係なく買うのが今の時代だと思うんですね。
表紙に波留さんを起用したのも、それが理由です。波留さんはNHKの連続テレビ小説『あさが来た』でブレイクしたあと、若い方から年輩の方まで幅広く支持されるようになりました。まさにエイジレスな読者をターゲットにしている弊誌にふさわしい方なのです。
――雑誌にとっては広告収入も大事ですが、ターゲットが幅広いと広告が入りにくくなりませんか。
若杉 リニューアル当初から営業サイドには伝えていますが、メインの読者層として意識しているのは30〜40代の主婦なんですね。その年代は、いろいろな経験を経て自分を見つめ直す時期に入っている女性が多く、もっとも雑誌を買う世代であることもわかっています。また、その年齢層に向けたテーマは20代にも60代にも共通するものが多いので、年齢に関係なく興味を持った人が手にとってくれるだろうと予測しています。
ただ、雑誌収入はあくまでも販売部数が第一で、会社からも「広告は気にしないで、読者の生活のことだけを考えて企画を立てるように」とアドバイスされています(笑)。ですから、あくまでも視点は読者目線で「年齢軸にとらわれない女性の暮らしに役立つ雑誌」へと転換し、「女性の暮らしをアップデート」という新キャッチフレーズのもと、どの年代でも読みたくなる雑誌を目指していきます。
――「女性の暮らしをアップデート」するための柱になるテーマは、「カラダ、料理、生活まわり」とリリースにあります。この3つを選んだのはなぜでしょうか。
若杉 暮らしのためになるということは、誰でもできる、いつでもできる、どこでもできることが大前提です。そのうえで競合他誌と差別化できるテーマを考えて、年齢軸を超えた共通の話題性が高いこの3つに力を入れていくことにしました。もう少し具体的に説明すると、カラダは、食べものから考えるカラダのこと。ストレッチやヨガのように実際に動いて鍛えるカラダのこと。不調を改善する生活習慣の工夫など。料理は、簡単に作れることはもう当たり前ですでに実践している人も多いので、節約や手抜きだけを目的とした料理は卒業して、料理そのものを楽しめるひと手間やコツを多く紹介していきます。生活まわりは、インテリア、ビューティー、ファッションまで幅広いジャンルのなかから、今話題のもの、流行のもの、売れているものを通して快適に暮らせる情報を伝えます。
特にカラダに関しては、年齢を問わず健康志向が高まっているにもかかわらず、専門誌以外でカラダのことを深掘りしている雑誌がまだ少ないんですね。ですからカラダをテーマにした企画は新しい『saita』の強みにしたいと思ってます。この3つのテーマでアプリをポチッと押してアップデートするように、今の暮らしがより簡単に快適にバージョンアップできる方法を紹介していきます。
――編集スタッフの多くは書籍はじめ、他部署から異動してきたメンバーが多いとか。それはやはりテーマごとの専門性を重視するためでしょうか。
若杉 これまでやってきた編集部が雑誌を立て直しても、大きく変化させることは難しいと思うんですね。それならば、まったく新しいメンバーで、まったく新しい雑誌をつくるつもりで大胆に変えたほうがいいという考え方です。書籍経験者を起用したのは、おっしゃるとおりで新しい軸となるカラダ、料理、生活まわりのテーマについて専門知識を持った人材がいたからです。私も、シリーズ39万部以上となった「かるしおレシピ」から収納本まで、本当に使えて役に立つ実用書をいろいろと担当してきました。現在の編集スタッフは20代から40代までいるので、今までの実績をそれぞれ新しい『saita』で生かしてほしいと思っています。
【後編】市販の品を使うか、自分で出し汁を引くか。それが読者の分かれ目?へつづく(6/7 11:30公開予定)
取材・文=樺山美夏