休みたくても休めない職場だからいつも自分は後まわし…。思い切って「自分を休ませる」方法とは?
公開日:2017/6/14
自分のやる気を奮い立たせ最大限に走り続けるためのやり方について書かれた本というのはよく目にするが、自分の休ませ方を指南した本というのはまだまだ少数だ。自分は油断するとすぐ休んでしまうからそんなものは必要ない、と思うことなかれ。怠けるのと休むことを混同してはいけない。ダラダラすることとも違う。人生を充実させよりよい方向に進ませる休み方がある。
本書『自分の休ませ方』(枡野俊明/青春出版社)は、読むだけで心があらわれるような透明な空気感があり、スッキリさせてくれるとともに凛とした筋のようなものを感じさせる一冊だ。著者は禅寺の住職で、本書では禅の視点から様々な局面での「自分の休ませ方」を考えたとあるが、美大の教授も務め社会との接点が多くある人だからなのか、上の空の説法にならず内容がすうっと心に降りてくる。
■止まって、休んで、また進む
とかく人は前に前に、先に先に行きたがる。そうしなければと思っているし、走り続けていると立ち止まることには怖ささえ感じるものだ。疲れていても止まったら最後だと思い休めない。
著者は階段に譬えていう。階段には必ず踊り場がある。その踊り場でひと息つくから、長く続く階段も上りきることができる。踊り場で立ち止まって、いま上ってきた階段を眺めると、新たな発見や気づきがあり、それが次の階段を上る際に役に立つ、と。
仕事でいえば、一生懸命に取り組んできた仕事が一段落したとたん間断なく次の仕事に取り組むのは、踊り場で立ち止まらない仕事との向き合い方だろう。ひとつ仕事をこなしたら、少し立ち止まって、振り返ってみる。すると発見や気づきがあり、それが次の仕事に有効に活きてくるのはいうまでもない。
■沈黙を怖れなくていい
最近は雑談や会話が途切れないためのハウツー本が人気で、沈黙に対する不安が大きいようだ。だが、淀みなく続く会話が、しゃべりたいことをしゃべっているだけの一方通行であったなら、心が通いあっていることになるだろうか。
そのときの想いや気持ちを伝えるにはどんな言葉がふさわしいのか、それを選びながらゆっくりと語りかける。言葉が相手の心に響いていれば、沈黙はかえて絶妙な「間」となり、会話の密度を高めることになるはず。
ワーっと盛り上がる会話もいい。ただし、大事なことは心と心を向き合わせてきちんと伝える。そんな会話のメリハリが人とのつながりを深めることになる。
「今日は彼とじっくり話ができてよかったなあ」
相手と別れた後、心があったかくなっているのを感じる。ふだん急いでいる心にとって、それは何よりの満たされた休息になるだろう。
本書は数分で読める短い項目からなり、1日のおわりに一遍ずつ繰り返し読みたくなるような本である。ところで禅の本分は「実践」にあるのだそう。ちょっとした心がけでできることばかりなので、実践すれば、身も心もきれいになりそうだ。心身がきれいになれば疲れもとれる。最近どうやっても疲れがとれない人は試しに読んでみてはいかがだろうか。
文=高橋輝実