風邪薬の選び方に、ジェネリックのデメリット…今こそ知りたい、薬のあれこれ

健康・美容

公開日:2017/6/15

『お医者さんにもらった薬がわかる本 その薬、ジェネリックでいいですか?』(関口詩乃/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 30歳を過ぎてから、ケガや風邪の治りが悪くなった気がします…。ああ、これが老化か、と。頭痛薬とか風邪薬とか、自分で決めている“いつもの薬”で治らなかったりすると、焦るんですよね。規定量を飲んで良くならなかったりすると、耐性がついちゃったのかな、別の薬に替えた方がいいのかな、とか…。だからといって薬局で、忙しそうな薬剤師さんを捕まえるのも気が引けるし…。市販薬との付き合い方って、ひょっとしたら一生、自分で見直し続けなければいけないものなんでしょうか。

『お医者さんにもらった薬がわかる本 その薬、ジェネリックでいいですか?』(関口詩乃/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、薬剤師であり、薬情報コンサルタントの肩書を持つ、関口詩乃さんによる書籍です。製薬会社や医薬品卸会社での勤務経験がある関口さんは、開発から販売後のフォローにいたるまで、薬にまつわるすべての段階をその目で見てきた人物。現在は、薬についてのあらゆる情報をわかりやすく伝える、いわば薬のプロフェッショナルとして活躍されています。

 処方されたものから市販品まで、薬に関するさまざまな疑問に答えている同書。例えば、「タイプ別! ベストな風邪薬の選び方」の項目では、関口さんもよく尋ねられるという「どれが一番効くの?」という問いに答えてくれています。風邪薬といえば、頻度の差こそあれ、多くの方がお世話になっている市販薬ですよね。ドラッグストアの風邪薬コーナーを覗くと、本当にたくさんの商品が並んでいますし、しかも商品名を見れば、エースとかゴールドとか、いかにも効きそうな言葉さえ添えてあって…。

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 数ある風邪薬の中から、どんなものを選べばいいのか。関口さんは、個人のライフスタイルに合わせたお薬との関わり方を提案してくれているのですが――これがあまりにも論理的で、単純明快な説明なのです。「○○が効くよ!」という具体的な商品名が出ているわけではないが、ずぶの素人がササッと読んでも、「言われてみればその通りかも…」と思わせるような、まさに名文! 読み始める前の自分が、どうして薬選びに迷っていたのかすら、思い出せなくなるかもしれません。

 薬に関するさまざまなトピックを取りあげている同書。タイトルにあるように、「ジェネリック医薬品」も、そのひとつなのですが…。さて、この「ジェネリック医薬品」、一体どんなものか、簡潔に説明できますか?

 新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を含んでいるけれど、その特許が切れたあとに販売されるから、安価で手に入るお薬…というあたりが恐らく、多くの方の認識でしょう。勿論、この回答も間違いではありません。ジェネリックといえばやはり、薬代を安くできる選択肢のひとつとして認識されていますよね。

 でも、ジェネリックが安く手に入るのは、特許が切れているからだけではないって知っていましたか?

 関口さんによると、ジェネリックの製造過程でおこなわれる試験では、先発品と比べて、「同じように胃(人工胃液)の中で溶けるか」「薬物動態(血中濃度)が同じ推移を示すか」という2点のみが確認されるというのです。ヒトの体を使って直接、同じ効果を確認しているわけではない、と…。こんな部分でも、コストカットがおこなわれているんですね。

 そしてこの事実が、処方された患者さんにとって影響をもたらすのはズバリ、副作用が起こった場合です。後発品メーカーは、製品の人体への影響に関するデータが少ないわけですから、その対応にも限界があります。こうした着眼点はまさに、薬のすべてを見てきたプロならではのもの。関口さんだからこそ可能な、注意喚起ではないでしょうか。

 ジェネリックを選ぶかどうか、という選択も含め、薬との付き合い方は、ともすれば悩ましいものです。しかもその決断は、自分や、自分の大切な人が弱っている時に下さなければなりません。世の中には「薬なんて絶対にダメ!」なんていう嫌薬系情報も溢れていますし、何となく飲みたくない・使いたくないと考えていらっしゃる方も多いかと思いますが…迷った時にはぜひ、関口さんのこんな言葉を思い出して、役立てていただきたいと思います。

薬は、道具に過ぎません。とはいえ、人類の叡智が結集された道具です。
ですから、薬に人生を支配されるのではなく、便利な道具としてつきあっていってください。

文=神田はるよ