アラサー軍人皇后による、あまりに型破りな後宮物語! 大人気シリーズ『紅霞後宮物語』最新刊発売

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『紅霞後宮物語』(雪村花菜:著、桐矢 隆:イラスト/KADOKAWA)

身分の低い女性が王子様に見初められて幸せにー。ありきたりな話とはいえ、女子はそんなシンデレラ・ストーリーが大好きだ。中華風ファンタジー『紅霞後宮物語』(雪村花菜:著、桐矢 隆:イラスト/KADOKAWA)も、庶民の出のヒロインが皇后になる話…とはいえ、こちらはかなり型破りな設定である。

まず、皇后となった主人公・小玉は軍人の30代女子(!)。皇后になったのも「身分が高くなれば、もっと大規模な軍を指揮できるだろう」という皇帝の考えがあったから。王子様に見初められて、というよりは武人としてのセンスを買われて皇后になったのだ。

そんな小玉は、武人らしく大雑把で竹を割ったような性格。“女の園”、後宮でも周囲の女官たちが次々彼女のファンになるというイケメンぶりだ。他にも、お調子者の宦官・清喜、小玉を信奉する妃嬪たち、小玉の元同僚女性で軍最強とも名高い明慧など、個性的なキャラが勢揃い。

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また、多彩な登場人物に加え、大河小説を思わせる壮大なストーリー展開も本書の魅力だ。皇帝の地位や命を狙い暗躍する者たち、先帝の遺児を担ごうとする者たちなど、後宮内はもちろん、国内外でも問題は尽きない。小玉を中心に大宸帝国の歴史を紐解いていくような濃密な読みごたえがある。また、この世界に生きる人々の逃れられない生死は、まるで自分も同じ世界に生きているようなリアルさを感じさせる。

一方、物語の主軸となるのは小玉と皇帝・文林の関係だ。小玉と同じく元武官だった文林は、もともとは小玉の率いる部隊の副官で、小玉の部下だった。「軍事のため」と、ビジネスライクな理由で小玉を皇后に据えた文林だが、その本心は別のところにあるようで…。普段は冷徹に皇帝として采配を振るう文林が、小玉とのやりとりにひそかに一喜一憂したり、彼女の危機に動揺したりと、そのギャップに萌える読者も多いはず!

6月15日(木)に電子書籍化された最新の第六幕では、そんな文林のこじれた愛情がさらにややこしいことになる。隣国・寛とついに開戦か――というところから始まる第六幕。小玉に手柄をあげさせたい反面、死地に向かわせることにためらいを感じてしまった文林は、ついに自分の気持ちと向き合うことに――? 皇太子問題など、次々に起こる難題に、こじらせ夫婦はどんな決断を下すのか? 現在、一部電子書店では注目シリーズの1巻がオトクに買える富士見L文庫創刊3周年フェアも開催中。こちらも要注目!

文=田中よし子(清談社)