「下を見ろ、俺がいる」借金返済50億円のどん底体験も…“AVの帝王"村西とおるが明かす、おカネの話
公開日:2017/6/27
節約や投資などお金に関する本は数多く出ているが、「AVの帝王」と呼ばれた、村西とおる氏が綴る『裸の資本論 借金返済50億円から学んだおカネの法則41』(村西とおる/双葉社)はひと味もふた味も違う。年商100億円の絶頂期から借金返済50億円のどん底まで、波瀾万丈という言葉では表しきれない、ジェットコースターのような人生を歩んできた村西氏自身の体験にもとづいた「おカネの法則」だ。
本書では、村西氏が恥も栄光もすべてをさらけ出し、「おカネとどう向き合うか」という問いに答えてくれる。41のエピソードの中から特に印象深かった2つを紹介しよう。
二千万円を持参した白髪の紳士。おカネにおける品性は、他人のために使うことで鮮やかな光彩を放つと教えられました。
村西氏が「AVの帝王」としての道を歩み出すきっかけとなったエピソードだ。1970年代に登場した家庭用ビデオデッキがメーカーの思惑どおりに普及しなかったのはソフト不足だった。違法なものと知りながらも、二千万円もの現金をもった一人の紳士が、「裏本の帝王」と呼ばれていた村西氏のもとに裏ビデオの制作依頼に訪れる。
この「裏ビデオ」が「VHS対ベータマックス」の市場争いの命運を分け、後の家庭用ビデオデッキの爆発的な普及をもたらすことになる。丁寧に頭を下げる紳士の慇懃な姿勢と凛とした佇まいから、村西氏はおカネにおける品性を学んだという。
たった一人で訪ねてこられた「ダイソー」の矢野社長さま。自分が現場に出向き、体を張ってきたからこそ「百円ショップ王国」は築かれたのです。
ダイヤモンド映像が倒産し50億円の借金を負ってAVの制作に明け暮れる村西氏のもとに日本を代表する100円ショップ「ザ・ダイソー」の社長がたった一人で訪ねてくる。
その用向きは過去の村西氏の作品を全国の店舗で販売したいというものだった。自ら一人で直接現場に出向き、商品を見定め、即断即決で商談をまとめる矢野社長の姿勢とともに「『欲がない人間』『好奇心のない人間』に用はない」というソニー創業者・盛田昭夫氏の言葉を、おカネを稼ぐコツとして紹介している。
この他にも、おカネを通じて村西氏が味わってきた苦悩と幸福、命のやりとりに至るような事件まで、それぞれのエピソードにおカネにまつわることわざや偉人の言葉を添えて紹介している。
村西氏は本書の最後を「下を見ろ、俺がいる」という言葉で締めくり、おカネに悩める人々にエールを送っている。おカネというものとどう向き合うべきかだけでなく、仕事や人との向き合い方についても触れられており、人生を豊かに生きるためのヒントが満載だ。ぜひ手に取ってみてほしい。
文=鋼 みね