【ダ・ヴィンチ2017年8月号】Cover Modelは、向井 理さん、斎藤 工さん!
公開日:2017/7/7
『連続ドラマW アキラとあきら』
7月9日(日)放送スタート!記念対談
池井戸潤の“幻の長編”と呼ばれていた『アキラとあきら』。
その刊行とともに最速ドラマ化された作品がついに放映スタート!
日本経済の激動期を背景に刻まれるヒューマンドラマの
中心に立つ二人が語る、本作の魅力と見どころとは──。
この人は、だから今この仕事を
しているのかという視点が拓かれる(向井)
二人のつながる部分は点としてあり、
次第に線となっていく(斎藤)
──脚本を読まれて、どのようなことをお感じになりましたか?
向井 これまでの池井戸さんの著作とは少し違う色合いの作品だなと思いました。家族のしがらみや企業の中での個人の闘いも堪能できるけど、それ以上に“アキラとあきら”、互いの生い立ちが色濃く描かれ、どこか土っぽい。そして、“だから、この人が今この仕事をしているのか”──そこに焦点を合わせることによって、成長物語としても観られる骨太な作品だよね。
斎藤 理(向井)が演じる階堂彬と、僕の演じる山崎瑛は、一人の人格の二面性を描いているのかなと思う瞬間もあった。大企業の御曹司として生まれ、次期社長という“宿命”に抗う階堂と、父の会社の倒産という過酷な“運命”に翻弄されながらも理想を育む山崎という対照的な二人の関係がこの作品の魅力だけど、一方で乖離している二人の意識が融合する場面もあって。反対側にもう一人の“アキラ”がいるという構図がすごくいい。だから、山崎を描くことで階堂も描かれたらいいなと思ったし、逆も然りだと思った。
向井 そうだね。
斎藤 鏡合わせのような二人の状況は全然違うけど、つながる部分が点としてあり、次第に線となっていく。そして後半は、ジャンルが変わったくらいエネルギーが解放されていく。自分の中でも、魂の格闘のようなものが湧いてきたというか。
向井 ストーリーに用意された過酷な試練に対して覚悟を決めていくのは山崎のほうが先で、僕の演じる階堂が前に進まないところを焚きつけてくれる。その状況に覚悟を決めてからのスピード感がすごかった。山崎の言葉は真実を突いてくる。言いたくないこともあえて言う、その関係性も興味深かったね。
斎藤 僕はこのドラマ、どこか舞台のようだと感じました。銀行、家族とステージが限定され、そこで人間同士のエネルギーがぶつかる構図が。囲いを作って人間のアイデンティティを闘わせるような。
■向井理さん
森見登美彦 小学館 1400円(税別)
10年前、鞍馬の火祭で彼女は姿を消した。10年ぶりに鞍馬に集った京都で学生時代をともに過ごした仲間たち。夜が更けるなか、各々が旅先で出会った不思議な体験を語り出す。その旅で全員が岸田道生という画家が描いた連作「夜行」に出合っていた……。
僕は森見さんが大好きで、ほぼ全部読んでる。数年前、『AERA』で対談連載をもっていたんだけど、その時に京都まで会いに行ったくらい(笑)。森見さんの作品は、アニメ化できても実写化は無理だと思うんだよね。(向井 理 談)
■斎藤工さん
『ゆめの はいたつにん』
教来石小織 センジュ出版 1800円(税別)
ごく普通の派遣事務員だった著者はある日、カンボジア農村部の子どもたちにアニメ映画を届けるNPOのリーダーになった。活動の経験はおろか統率力もない著者が叶えた夢──一人の小さな夢がみんなの大きな現実になる、映画のようなノンフィクション。
この『ゆめの はいたつにん』という本には“向井理”という名前が出てくる。僕らと同い年の、カンボジアで移動映画館をやっている女性が書いているんだけど、彼女がなぜ移動映画館を始めたかという理由の一つが、カンボジアが舞台になった、理の主演映画『僕たちは世界を変えることができない』なんだ。(斎藤工 談)
取材・文=河村道子 写真=江森康之