“眠気”を制する者が人生を制す! 世界のエグゼクティブは始めている“睡眠メンテ”「黄金の90分」とは?
更新日:2017/7/6
「疲れているのにうまく眠れない…」そんな経験はないだろうか? 睡眠に満足してない私は、本屋で『スタンフォード式 最高の睡眠』(西野精治/サンマーク出版)に出会った。凄く良く眠れそうなタイトルである。
本書では、睡眠の専門家が、睡眠時間と睡眠の質について詳しく掘り下げ、新事実を解き明かす。30年以上睡眠と対峙(たいじ)した著者が経験し、学び突き止めたことのエッセンスを凝縮し、実用的、即効的にわかりやすくまとめた一冊だ。
ちなみに、「スタンフォード大学睡眠研究所」は、1963年に創設され、世界の睡眠医学を牽引し、数多くの睡眠研究者を輩出したことから「世界最高の睡眠研究機関」と呼ばれる。
著者は「睡眠の謎を解き明かして社会に還元する」ことを使命として、多くのアスリートから支持されるマットレスパッド「エアウィーヴ」の開発研究にも携わった。
本書の内容の一部を紹介したい。
■睡眠にしかできないこと
どんな科学的な治療でもできない脳や臓器のメンテナンスが、睡眠中だけできる。科学者や医者が何人集まってもできない体内リズムのバランス調節が、眠るだけで整う。このほかにも、まだわかっていない機能があり、睡眠はすべての医学の基礎であり、高血圧、心臓疾患、認知症などさまざまな不調にかかわりがあると考えられている。
スポーツ医学でも、今では「睡眠こそがすべての基礎である」という認識に変わりつつある。睡眠管理をすればパフォーマンスの向上はもちろんのこと、ケガや産業事故の予防にもなる。リハビリ中に質の良い睡眠をとれば、回復が早くなることも十分考えられる。
■知らぬ間にはまる“眠りの借金地獄”
著者をはじめとする研究者は、睡眠が足りていない状態を、「睡眠不足」ではなく「睡眠負債」と表現。借金同様、睡眠も不足がたまって返済が滞ると、首が回らなくなり、しまいには脳も体も思うようにならない「眠りの自己破産」を引き起こすからだ。
「睡眠負債」には、簡単には解決しない深刻なマイナス要因が積み重なるという意味も含む。自覚しないままに脳と体にダメージを与える危険因子が蓄積される、とても恐ろしい状態なのだ。
■入眠直後の「黄金の90分」が「最高の睡眠」の鍵!
入眠直後のもっとも深い眠りの90分が、最高の睡眠の鍵(かぎ)を握る。睡眠メンテナンスで意識したいのが、「最初のノンレム睡眠」をいかに深くするか。深く眠れば、睡眠リズムも整い、自律神経やホルモンの働きも良くなり、翌日のパフォーマンスも上がる。
睡眠には、脳と体に「休息」を与え、「記憶」を整理して定着させ、「ホルモンバランス」を調整し、「免疫力を上げて病気を遠ざけ」、「脳の老廃物」をとる、ミッションがある。
■「ぐっすり寝る人」は朝から違う
「不眠症は朝から始まる」という。「光」と「体温」、2つの覚醒のスイッチを押すことが重要で、体温、自律神経、脳やホルモンの働きも、光がないとリズムが崩れて調子が悪くなるのだ。それは、光の刺激が脳の活性化に影響を与えるからだ。「夜間の豆電球程度の明かりが、肥満や脂質代謝異常のリスクも増やす」という報告もある。
朝は太陽の光を必ず浴びる習慣をつけたい。数分程度の時間でもOK。雨や曇りでも、体内リズムや覚醒に影響を与える光は脳に届く。
■アラームは「2つの時間」に
たとえば、絶対に起きたい時間の7時と6時40分の2つの時間にアラームをセットする。1回目のアラームは「ごく微音で、短く」であれば、ノンレム睡眠中なら「悪い目覚め」をスルーでき、浅い睡眠であるレム睡眠のときに起きられる確率が、条件によって多少変わるが約1.5倍になるそうだ。
そのほか、詳しい解説や研究データ、どうしても資料を作らないといけない夜の過ごし方といった具体的な対処術なども、ぜひ本書でチェックしてほしい。
文=Sachiko