「ので」「だが」を使いすぎてませんか? ベテラン新聞記者が教えるプロの文章術
公開日:2017/7/10
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文字は誰でも書ける。文章は誰でも書ける。しかし、読みやすい文章、言いたいことを相手に伝える文章を書くのは、なかなか難しい。社会人ならば、そういった文章の大切さを嫌でも思い知らされているだろう。学生も、日々の授業や就活で書く「エントリーシート」を通して、文章力の大事さを感じ始めているかもしれない。文章は誰でも書ける。しかし、上手い文章を書くにはそれなりの訓練が必要だ。
「文章力を身につけたい」という人にオススメしたいのが『マジ文章書けないんだけど』(前田安正/大和書房)。著者の前田安正氏は、朝日新聞のベテラン校閲記者。いわばプロ中のプロだ。本書では前田氏が文章を書くコツを非常にわかりやすく紹介している。さっそくそのコツをほんの少しだけ、ご紹介したい。
■初級編
本書の初級編では、誰もが書きがちな文について言及している。まずは以下の文を読んでほしい。
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このバッグはブランドものなので、値段と人気が高く、品質とデザインが美しいブランドだ。
なんだか違和感を覚えるこの一文。まずはこの文の骨格を探る。
このバッグは ~ ブランドだ。
そして主語がどの述語にかかっているか考える。「このバッグは」は、「ブランドものなので」と「ブランドだ」の両方に掛かっているので、このように読めてしまう。
このバッグはブランドものなので、ブランドだ。
このように文を分解してみると、おかしいポイントが見つけやすくなる。さらに、文の「~」にあたる部分も考えたい。
「値段と人気が高く」という言い方は
=値段が高く&人気が高く
「品質とデザインが美しい」という言い方は
=品質が美しい&デザインが美しい
と言い換えることができる。「値段」と「人気」は「高い」という言い方をするが、並べて使うのは良くない。「デザインが美しい」という言い方はするが、「品質が美しい」という言い方はしない。このように似たような言葉が並ぶと、最後の要素だけに述語を合わせてしまうケースが出てくるのだ。これらを正しく言い換えると
値段と人気が高く=値段は高いが、人気がある
品質とデザインが美しい=品質が良くデザインが美しい
となる。上記を踏まえて元の文に手を加えると
このバッグはブランドものなので値段が高い。しかし品質が良くデザインが美しいので人気がある。
となり、すっきりとした印象の文章となる。初級編をマスターできれば、読者の書く文章は、今まで書いていたものよりすっきりとした、わかりやすい内容に変化するだろう。
■中級編
本書の中級編では、文章の構造について解説している。その中でも、誰もが多様しがちな「だが」と「ので」について解説したい。まずは以下の文を読んでほしい。
犬を飼っているのだがとても可愛いので、友達から猫を飼わないかと言われてもその気にはならない。
この文で注目してほしいのが「犬を飼っているのだがとても可愛い」だ。誰もが使いがちな「だが」というワード。しかし「だが」は逆接で使ってこそ活きる。例えば以下の文だ。
甘いものを食べすぎない方がいいのはわかっているのだが、おやつをやめられない。
試しに上記の2つの文を分けてみると、こうなる。
犬を飼っている。とても可愛い。
甘いものを食べすぎない方がいいのはわかっている。おやつをやめられない。
前者は分けても違和感がないが、後者は、2つの文が相反しており、間に何か言葉を入れたくなる印象を受ける。これこそ「だが」が機能しているかどうかを見極めるポイント。本書では元の文の改善案として、「だが」を取り除き、「ので」の代わりに「だから」という言葉を使い、シンプルな文章にすることを提案している。
可愛い犬を飼っている。だから友達から猫を飼わないかと言われてもその気にならない。
「だが」「ので」「けど」「が」という接続ワードを使うときは、その言葉が本当に機能しているのか、文を2つに分けて検証してみると、シンプルな文章に生まれ変わるかもしれない。
以上、本書のコツをざっくりとご紹介した。本書ではさらに上級編とプロ級レベルの文章術も紹介されており、本書を読み通せば劇的に文章力が身につく内容となっている。まさしく国語の教科書と言っても過言ではない。個人的には、国の利権団体に話をつけ、ぜひ来年から本書を学校の教科書として採用してほしいと考えている。
文=いのうえゆきひろ