家が半額に!? 最近よく聞く「2025年問題」―― 東京の不動産は暴落してしまうのか?
公開日:2017/7/14
東京23区の不動産にも暴落ラインが迫っているらしい。暴落はどこで起こるのか? 回避するにはどうしたらよいのか? 不動産バブルのしくみから、大暴落までのシナリオを予測した『2025年東京不動産大暴落』(榊 淳司/イースト・プレス)。著者の榊 淳司氏は新聞や雑誌などに多くの記事を執筆する不動産ジャーナリストである。本書ではすでに決定しているイベントや統計予測を解説しながら、暴落へのスケジュールを見ていく。
■「2025年」に、いったい何が起こるのか?
戦後最大のボリュームゾーンといわれる団塊世代(1947~1949年生まれ)全員が75歳以上の後期高齢者となることで、介護・医療費など社会保障費の急増が懸念される問題を「2025年問題」という。後期高齢者が、約3500万人(人口比約30%)に達すると推計される「超高齢化社会」、不動産市場には売り物件があふれているが、いるのは老人ばかり。売りだされた住宅をいったい誰が買うのだろうか?
東京オリンピック終了の5年後である2025年。空家率の増加や都市部の人口減少が顕著になるであろう。それが株価の急落、地価やマンション相場価格の暴落に繋がる恐れがあるのではないかと著者は予測する。現在の日本には、オリンピック後の不況を上昇に転じさせる活力はないのだ。
■不動産の価値は「利用価値」で決まる
新潟県苗場のリゾートマンションなどは、販売価格は700万円だったものが今は10万円でも買い手がいない。管理費や固定資産税を考えると10万円払ってもいいから売りたいという状況だそう。このように資産価値ゼロのエリアが、日本の不動産の面積の8割あるという。都心へのアクセスが不便な、港北ニュータウン、千葉ニュータウン、多摩ニュータウンなどの大規模なニュータウンからは転出者も多く、すでに衰退が始まっているという。千葉県船橋市や埼玉県上尾市の駅から遠いところには、すでに数百万円の住宅もあるという。住みたい街とされる武蔵小杉のように、短期間に高層マンションが立ち並んだエリアも、中古価格の相場が崩れやすく暴落しやすいそうだ。「利用価値」のない不動産の波が、東京、大阪、名古屋など、政令指定都市クラスの大きな街に押し寄せてくるのが2025年と著者は予測する。
暴落を回避するためには、「新築の抑制、タワーマンションの規制、流通市場の透明化(レインズの一般開放)、民泊の合法化」などが必要だと著者は考える。日本全体で住宅が余ってきているうえ人口も減るというのに、今も多くの不動産系企業がマンションを建て、個人は新築を建てる。不動産業界は、航路の先に大きな氷塊が見えているのにもかかわらずもくもくと進んでいるタイタニック号のようなものだと著者は述べる。一般ユーザー向けの住宅購入セミナーも開催している榊氏ならではの、誰にも理解しやすい一冊となっている。
文=泉ゆりこ