深海生物ファンにはたまらない! 史上最初の覇者、“王蟲”にそっくり、両生類史上最長級…“古生物”のふしぎな生態に迫る

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更新日:2017/8/14

『古生物たちのふしぎな世界』(土屋健:著、田中源吾:協力/講談社)

 歴史にロマンあり――今から150年ほど前の幕末に活躍した、坂本龍馬や新選組らの生き様に胸を熱くさせることもあれば、平安末期の源義経と従者・弁慶の絆に涙することもある。人類が誕生したのは一説によると500万年前。急速な進化を遂げたヒトは、以降様々なドラマを作り上げてきた。

 今回は人類が生まれるもっと前に、地球上に生を受けた“古生物”をクローズアップしたい。“古生物”とは今は絶滅してしまい、化石でのみ姿を見ることができる生物だ。有名な例を挙げれば「ティラノサウルス」や「トリケラトプス」などといった恐竜、中学校の歴史でも習う「マンモス」や「ナウマンゾウ」などもその一つ。

『古生物たちのふしぎな世界』(土屋健:著、田中源吾:協力/講談社)では、今から5億4100万年前から2億8900万年前の「カンブリア紀」「オルドビス紀」「シルル紀」「デボン紀」「石炭紀」「ペルム紀」に生きていた古生物を紹介する一冊だ。しかもカラーイラスト・化石写真で紹介されているため、「こんな生き物がいたのか…」と眺めているだけで楽しむことができる。

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 恐竜よりも昔を生きた古生物たちは独特な姿をしており、たとえるならばゲームに出てくるモンスターのよう。さらに生態もふしぎだらけ。想像を超える彼らの秘密に迫ると、人類史とまた違ったロマンを感じることができるのも本書の醍醐味といえる。

 それでは、以下に本書で紹介されている魅力的な古生物を少しだけ紹介しよう。

■“史上最初の覇者”アノマロカリス・カナデンシス

(C)月本佳代美

 動物の世界は弱肉強食。強いものが弱いものを喰らい生き残る食物連鎖が自然の摂理だ。そのシステムで初めて頂点に立ったとされているのが、本書の表紙を飾っている「アノマロカリス・カナデンシス」。全長は約1メートルほどだが、当時の生き物のほとんどは10センチ程度だったため、全長比は現代でいえばヒト一人に対してJR在来線の1車両分に相当するのだとか。

 そして、一度見たら忘れることができないフォルム。内側に鋭いトゲが並んだ大きな触手に大きな目、カラダの両サイドに11対のひれを有する姿は、ゲームであれば間違いなくボス級だ! まさに“史上最初の覇者”にふさわしい。しばらくイラストを眺めていると、彼(彼女?)のフィギュアが欲しくなってくるのは私だけなのだろうか…。

■小さいけれども、その姿は「風の谷のナウシカ」の王蟲! オッファコルス

「風の谷のナウシカ」を一度見たら忘れることができないのが、そう王蟲(おうむ)だ。そんな王蟲とそっくりな古生物が4億4400万年前のシルル紀に存在していたのだという。その名も「オッファコルス」。

 背中の殻と前に突き出た付属肢の“うぞうぞ感”はまさにあの王蟲だ。ナウシカの王蟲は人間よりもはるかに大きなカラダだが、オッファコルスは全長5ミリメートルほどで“手のひら王蟲”といえる。

■全長10メートルオーバー!? 両生類史上最長級のプリオノスクス

(C)服部雅人

 約2億9900万年前、ペルム紀になると両生類や爬虫類が登場する。両生類であるプリオノスクスはカラダの一部しか化石が見つかっていないが、復元した頭部だけでも1.6メートルを超え、全長では10メートルにも及ぶのだとか。イラストを見ると姿はまるで爬虫類のワニのよう。水中を主たる住処にし、魚を食べて暮らしていたという。叶うことなら、魚を追いかけるその雄姿を見てみたいものだ。

 近年、深海魚や「毒」を持つ生き物、ダイオウグソクムシなどちょっぴり変わった生物が人気を博している。これらの大先輩ともいえる“古生物”の雄姿・生態もかなり見ごたえアリ。気になる方は手に取って本書を眺めてみてほしい。

文=冴島友貴