負の感情は引きずらないように…ポジティブだけではない、本当の「引き寄せの法則」とは?
更新日:2017/7/21
これまでに数々の書籍が出版されている「引き寄せの法則」。書籍を手に取った方や法則を実践した方、実際に何らかの結果が出たという方もいるだろう。一方で、引き寄せの法則を実践しても結果が出ない“引き寄せ難民”が増えているのも事実。しかし、そんな人たちのヒントになるような情報は、あまり多くない。
この状況を鑑みて、引き寄せ難民を含むすべての方に“本当の”引き寄せの法則を紹介するために、3年間温めた企画が形になった。『成功する人だけが知っている 本当の「引き寄せの法則」』(ワタナベ薫/扶桑社)だ。
ポジティブだけではない、本当の「引き寄せの法則」
「3年くらい前に『引き寄せの法則が人をダメにする』という内容の本を書きたかったのですが、その時には実現しませんでした。しかし、引き寄せ難民がさらに増えていることや、自己啓発の世界の方向性に疑問を感じ、引き寄せの法則の逆バージョンのようなものを書いてみようということになり、出版に至りました」
こう語るのは、著者のワタナベ薫さん。最近の「引き寄せ」ブームに警鐘を鳴らすべく「本当の引き寄せの法則」について書かれた本書では、引き寄せのポジティブな面だけではなく、ネガティブな面にも注目しているのが特徴だ。
「引き寄せは本来シンプルで簡単なもの。気分がいいと引き寄せにつながるのは事実です。でも現実には、気分が悪くなる出来事の方が多いくらいです。それなのに、ネガティブな気持ちになってしまった時の思考の変え方を書いたものがありません。だから、現実的な「引き寄せの法則」について書きたいと思いました」
負の感情を抱いた時の対処法
日々の生活で抱く負の感情にも向き合っている本書。負の感情は負の引き寄せにつながってしまうということだが、どう対処すればいいのだろうか。
「生きていれば、誰にでも負の感情は生まれます。その感情をスルーすることを勧める書籍が多いですが、私はその逆。負の感情に蓋をすると、いつか溢れて取り返しのつかないことになるかもしれません。だから、その感情に浸って、そういう気持ちを抱いていることを、頭でしっかりと理解します。頭で感情を理解すると、客観的になって、感情自体も小さくなるからです。その感情を抱いた理由を書き出すのも効果的です。例えば、自分が怒った時の理由を書き出すと、大抵は大切な価値観や信念を侵された時。書き出しをすると、そこから分かってくることもあります」
ワタナベさんによれば、負の感情を抱くことは悪いことではないが、引きずらないように、その都度対処することが大切だそう。
「正の感情と負の感情は表裏一体。お互いに支え合っているので、どちらが良い、悪い、ではありません。負の感情があるから、改善点も見つかります。大切なのは、負の感情を一刻も早く昇華させること。そのために自分なりの最善の方法を知っておくといいと思います」
思考停止にならないように気をつけて
本書では、引き寄せの根底にある概念や理論が丁寧に説明されている。法則を実践するだけではなく、根拠を理解することは、なぜ大切なのだろうか。
「人にもよると思いますが、裏付けとなる理論が分かっていると、信じる力が強くなり、思い込みも強くなります。思い込みは現実になることも多いですね。言われたことをそのまま実行する人は、素直な人なので、成果が出やすい一方で、思考停止状態に陥っている可能性も。思考停止になると、自分の心が奪われ、お金も時間も奪われてしまいます。自分の心を守るためにも、裏付けとなる理論を理解することが必要です。最近の自己啓発は、“言われたことをやればいい”という、思考を伴わない方向へと流れているような気がして、懸念しています」
良いこと、悪いことをデータ化する
日々の生活で無意識に行った行為が引き寄せにつながった、という経験を持っている方もいるだろう。筆者も、本書を読んだ時に、「引き寄せの法則に当てはまっていたから、あんなに素敵なことが重なったのか!」と、納得したエピソードがある。ということは、普段から引き寄せの法則を意識していれば、もっと良いことがあるということだろうか?
「引き寄せの法則を意識すると、ポイントが分かってきます。そこで大切なのが、「データ化」です。良いことだけではなく、悪いこともデータ化しましょう。すると、良いことが引き寄せられた時、悪いことが引き寄せられた時の状態が分かるので、自然と良い方向へと向かおうとします。悪いことが引き寄せられる時のパターンが分かっていれば、対処をして連鎖を止めることができるようになります」
お金に負の感情を乗せない
大きな成功を収めているワタナベさんだが、過去には経済的に苦しい時期もあったそう。そんな経験から、お金の勉強をするようになり、お金に負の感情を乗せなくなったところ、お金の巡りが良くなったそうだ。
「お金がない時期には、節約をして、それなりにやっていました。ただ、30代初めには、将来への不安も強くなり、アルバイトを掛け持ちする生活で体を壊したこともあります。その後で、少し力が抜けて前向きになり、お金の勉強をしました。そして、自分が家計のことで一喜一憂して振り回されていることに気付いたんです。赤字になるとパニックになっていましたが、お金に負の感情を乗せていたのが良くないと分かり、それをやめたら巡りが良くなりました。貯金をしてお金を貯めるというより、稼いでお金を増やすという考えに変えたら、理想の状況に近づいていきました」
貯金をすることも大切だが、お金を稼ぐ方向にシフトして、今の成功を手に入れたワタナベさん。本書でも、貧しさよりも豊かさに目を向けることの大切さを強調している。お金がないから不幸なのではなく、お金がなくても幸せな出来事は必ずあるはず。その幸せに気付いて感謝できれば、少しずつ豊かさにつながっていくのだ。
幸せのハードルは低くして
引き寄せを成功させるための最大のポイントは、「今ある幸せ」に気付くこと。たくさんの幸せを感じるために、ワタナベさんは「幸せのハードルを低くする」ことをオススメしている。
「小さな幸せを感じられれば、いつも幸せでいられます。そのためには、幸せのハードルを低くすることが大切。ハードルが高いと、たまにしか幸せを感じられませんから。私は家で和食を食べることが幸せです。そして、小さな幸せや喜びを感じると、心が幸せなので、そこで思ったことが実現したり、お仕事が入ったりすることもあります。思ったことが叶いやすくなるんですね。一緒に暮らしている犬と猫と、お気に入りのソファーでコーヒーを飲む時も、最高に幸せです。日常の生活に幸せを見つけて感謝していると、引き寄せを強めることができます」
作家やメンタルコーチとして活躍しながら、会社の経営にも携わる多忙な毎日を送るワタナベさん。この成功の裏にあるのは、日々の幸せに感謝する気持ちだった。何気ない日常にも、小さな喜びはたくさん散りばめられている。
本書で紹介されている引き寄せの法則は、多岐に渡るがシンプルなものばかり。今まで自分を縛っていた概念を捨てて、自由に前向きに、毎日を過ごすヒントがもらえそうな一冊だ。
取材・文=松澤友子