筋トレマニアは時間術の達人!? マッチョ社長に学ぶ究極の時間の使い方
公開日:2017/7/31
適度な運動は、健康維持はもちろん、ダイエットにも効果的。この発言に異を唱える人はほとんどいないだろうと思う。
でも実際はどうだろう。やるとしても軽いウォーキングくらいがせいぜい。某高級ジムの大ヒットで筋トレ人口が増えてきているとはいえ、本格的にジムに通うor自宅でがっつりとトレーニングするまではとても…という人も少なくないのではないだろうか。
その人たちの何割かに共通する言い分は「わざわざ運動する時間がない」というものだ。確かにハードなトレーニングはそれなりに時間がかかる(しかも疲れる)。仕事や家事と並行してトレーニングをするのは難しいと感じる人がいても無理はない。
だからだろうか。本書『筋トレライフバランス マッチョ社長が教える完全無欠の時間管理術』(Testosterone/宝島社)の著者Testosterone氏は、人からよく「筋トレする時間が一体どこにあるんですか?」と訊かれるそうだ。
著者は現役バリバリの国際派ビジネスマンで筋金入りの筋トレ好き。アジアの某都市で毎日社長業をこなしながらジム通いを継続する。しかもツイッターから人気に火がついて筋トレ関係のヒット本を連発する人気作家にもなってしまった。
そんな多忙すぎる彼が自らの時間管理術やメンタル管理術を明かしたのが本書だ。ちなみに先ほどの問いに対する彼の答えはというと。
逆説的だが、その答えは「筋トレをしているから」にほかならない。
ここはさすが筋トレ好き。「忙しいから筋トレできない」とは絶対に言わない。
人間は不思議なもので、どうしてもやりたいことがあると、時間の使い方にメリハリがついてくる。例えば、課題を早く終わらせるために集中力は上がるし、時間を確保するために工夫を施す。身体からムダなぜい肉を削ぎ落とすように、時間の使い方を見直し、考えに考えてスリムアップしていった。
そう語る著者の生活はどこまでもストイックで合理的。仕事帰りにトレーニングをする人も多いが、彼は早朝トレ派だ。仕事帰りは会食や急な仕事などで邪魔が入りやすいというのがその理由。さらに「ジムをサボる」という誘惑に負けないために、24時間営業のジムから徒歩5分の場所に住んでいる。
そして早朝にトレーニングを終わらせるために朝は喜んで4時起きし、食後からトレーニング前までの90分に猛然と仕事をする。朝は頭が冴えているので頭を使う仕事を終わらせるには最適だし、「筋トレの時間まで」という明確なタイムリミットを設けることでより集中力を上げられるからだ。さらに選択に使う時間がもったいないため毎日着る服や食事はルーティン化etc.――。
これはあくまで著者がたどり着いた生活パターンであって、一般人がいきなりこのライフスタイルに挑戦するのは難しいかもしれない。ただ1つだけ言えるのは「できない言い訳を考えるのは簡単だが、はたしてそれで本当にいいのか?」ということだ。
別の章で著者はこうも言っている。
人は環境でなく選択で作られる。環境を活かすも殺すも自分次第だ。今の環境で花開いていないやつは、別の環境でも花開いていないということを覚えておけ。
持って生まれたもの(頭脳や家庭環境など)の影響もあるかもしれないが、基本的に著者は徹底して努力の人である。英語が喋れないまま単身渡米するような状態から英語・中国語を操るトリリンガルに。110kgの肥満体から筋トレで40kg近く痩せ、留学先で格闘家デビュー。どれも並々ならぬ努力が必要だ。もちろん多忙な中ハードなトレーニングを続けるというのもその1つだろう。
筋トレではトライアンドエラーで目標達成を目指していく。それだけに「筋トレは、成功体験を得るためのプロセスが凝縮されている」ということになるのだ。彼の精神力や努力する習慣が筋トレによって得られたということは想像に難くない。
自分を変えるために必要なのは意志の力であり、それを実行に移そうとする努力である。努力の力で人生を切り開いた人間の言葉だから持つ説得力。それが彼の発言にはある。読むだけでなぜかポジティブな気持ちになれる(そして無性にジムに行きたくなる)1冊だ。
文=遠野莉子