全世界37カ国で話題! 奴隷生まれの少女が王女になる! 予測不可能裏切りファンタジー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『レッド・クイーン』(ヴィクトリア・エイヴヤード:著、田内志文:訳/ハーパーコリンズ・ ジャパン)

 自分の身体のなかにはどんな血が流れているのだろう。自らの血筋を意識しながら生きていくことはこんなにも苦しいことなのか。
本書『レッド・クイーン』(ヴィクトリア・エイヴヤード:著、田内志文:訳/ハーパーコリンズ・ ジャパン)は、支配階級と奴隷階級に二分された世界を生き抜く少女を描いた海外ファンタジー。2015年に発売されるやいなや、NYタイムズのベストセラーリスト初登場1位を獲得、読者投票によって選出されるGoodreads Choice Awardsにおいては新人賞を受賞し、全世界37カ国で刊行されるに至った話題作だ。全世界で大人気のこの作品は、四部作の一作目。“貧しく生まれ育った少女が瞬く間に王子の婚約者になる”。作品の概略をなぞれば、『レッド・クイーン』は、シンデレラストーリーなのだが、ただのシンデレラストーリーではない。シンデレラストーリーに、異能力バトルや心理戦の要素がかけあわさった、ファンタジー&SFならではの魅力がギュッと詰まった物語だ。

 優れた能力を持つ、支配階級〈シルバー〉。力を持たない奴隷階級〈レッド〉。二分された世界のなかで、奴隷階級〈レッド〉として生まれついた17歳の少女メアは貧しい村で家族と暮らしていた。ある日、ひょんなことから、支配階級〈シルバー〉の2人の王子の花嫁選びの会場に居合わせたメアは、〈レッド〉が持つはずのない特殊能力を発揮してしまう。王家に捕らえられ、死を覚悟するメア。だが、王家は、その命と引き換えにメアの名前と自由を奪い、“行方不明になっていた〈シルバー〉の王女”のフリをすることを強要する。宮殿で待ち受ける謀略と裏切り、冷酷な国王と2人の王子。奴隷生まれの少女が、王女になる時、世界は一体どう変わるのか。

 メアの心の葛藤には、誰もが胸を痛めることだろう。メアは、支配者階級〈シルバー〉を憎く思ってきた。〈シルバー〉は、皆それぞれ特殊能力が使える。火を操る能力や鉄を操る能力、人の心を覗き込む能力や人を操る能力…。メアは今まで自分に能力があるとは思ってもみなかったが、突然、雷を生み出し、操る能力を持つ事実を知る。冷徹な王とその妃により、“〈シルバー〉の王女”のフリをすることを強要され、自分自身も周囲も騙し続ける日々。自らが〈レッド〉だとバレたら一巻の終わり。憎く思ってきた〈シルバー〉の能力を持つ自分は何者なのか。家族と引き離されて、王女として暮らすメアは日々思い悩んでいる。

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 だが、メアは、決してめげない。誰かの言いなりになどならない。メアは、支配階級からの独立を主張するテロリスト集団〈スカーレット・ガード〉と手を結び、為政者との戦いを決意するのだが…。“持つはずのない”力に目覚めたメアの運命は。誰が敵で誰が味方かわからない、裏切りの物語がここにある。

 登場人物たちがみな個性的。メアを王家に招いた第一王子カル、メアの婚約相手となる第二王子メイヴン、幼馴染のカイローン…。特にメアに関わる男たちは揃って魅力的。心揺れ動くメアと、そんな彼女を支えようとする男たちの間で繰り広げられる恋愛模様もこのストーリーを彩っている。

 発行されるやたちまち重版。全世界で話題のこの物語は、日本においても、多くの人を冒険の世界へ誘うだろう。本国では発売直後に大手映画会社が映画権を獲得。実写になったメア達を想像しながら読むのもまた楽しいだろう。ファンタジー好きも、アクション好きも、SF好きも、恋愛もの好きも、心掴まれること間違いなしの一冊。

文=アサトーミナミ