『ちいさな国で』
ガエル・ファイユ／著　加藤かおり／訳

　住む国も話す言葉も信じる神も同じ人々が、ある日殺し合う敵となる。背丈と鼻の形で２つの民族に仕分けされて。１９８２年アフリカのブルンジ共和国で、隣国ルワンダ難民の母とフランス人の父の間に産まれた著者のデビュー作。１９９３年内戦勃発前後の同国を主な舞台とし、少年の繊細な感情、特権階級の暮らし、仲間との時間、両親の葛藤、そして選挙を契機とする政情の変化と恐怖、長い苦しみが綴られる。凄惨な場面もあるが、山の稜線に日が沈む光景や、故人や文通相手への詩情豊かな文章が心を打つ。

　今回は、祖国への思いが響いてくるオーラ本と出合った。