戦争によって未来を踏みにじられた少年たちの物語 室積光著『遠い約束』
更新日:2017/11/11
戦後70年経った今、あらためて戦争の現実・悲惨さを問う小説『遠い約束』が2017年7月29日(土)に発売された。
18年間上演されてきた舞台『遠い約束~おじいさんのタイムカプセル~』を書籍化した同書。叔父をブーゲンビル島で亡くしている著者・室積光が、戦争体験者や遺族を実際に訪ね歩くことでわかった戦中日本の「現実」をベースに作った物語となっている。
初演から今にいたるまで、取材で戦前の生活に関する新たな情報が入る度にその部分を書き換え、より「リアル」に当時の現実を描くものへと改稿。たとえば小説の中に登場する特攻隊の郷土訪問飛行は、室積が戦友会など戦争体験者を訪ねることで新たに知った情報だった。
<あらすじ>
1933年、校庭の桜の根元に埋めた「私の将来」と題した作文。親友だった5人は、50年後に開封することを約束する。しかし、その誓いは無残にも戦争によって踏みにじられる。1人生き残った林健一は「記録係」として、友たちがどう生き、何を夢見て、そしていかに死んだのか、事実を語り継ぐ。その想いは故郷を愛する者、戦争を体験していない者たちにも伝播していく―。
戦争の悲惨さを描いた同書には、全国の書店員からも感動の声が続々届いている。
戦争の悲劇と向き合い、戦争の残した爪痕を切なく描ききっている。おすすめしたい1冊です!くまざわ書店大泉学園店 志水雅弘さん
未来に大きな希望を抱いた少年の無邪気で明るい姿を、一瞬にして悲壮な姿に変えてしまう描写はあまりにも強烈で、このような過ちを二度と繰り返してはいけないのだといった強いメッセージを感じる。本書は、これからの未来を担う私達に向けての、平和を願うバトンそのものだ。文教堂書店青戸店 青柳将人さん
幼いころからの友と将来の夢を語りながら、ともに年を重ねていく。そんなありふれた人生の尊さをひしひしと感じました。軍神になることよりも友情を。戦後72年の今、改めて思い返します。有隣堂伊勢佐木町本店 佐伯敦子さん
登場人物のひとりが卒業文集にこう記す。“僕の将来はみんなの友だちです。おとなになってもみんなの友だちでいたいです”抜き出してみると何気ない文章に思えるが、物語を読み進めていくうちにこの言葉の響きは強さを増していく。戦争という抗えない現実の中でお互いを強く想いながら生きた若者たちを、細やかな描写で静かに描く。KaBoS宮前平店 大坪広幸さん
室積は「戦中の日本には、あまりに哀れな『幸せ』があふれている」と語っている。悲惨な戦争の最中に輝いた若者たちの姿を描いた同書。リアリティに満ちた悲劇と、かけがえのない友情に涙することを覚悟して読もう。
室積光(むろづみ・ひかる)
山口県光市出身・在住。東京経済大学在学中から、本名の福田和洋名義で、 映画、テレビに俳優として活動。テレビではNHK「マー姉ちゃん」で初レギュラー。その後「3年B組金八先生」に保健体育の伊東先生役で出演。その他、NHK大河ドラマなどにも出演。また、劇団「東京地下鉄劇場」を主宰し、脚本、演出を手がける。小説家としては2008年に『都立水商!』でデビュー。その他の著書に『ドスコイ警備保障』『史上最強の内閣』『埋蔵金発掘課長』などがある。
※掲載内容は変更になる場合があります。