「マツコの知らない世界」で話題になった水族館プロデューサーのユニークな水族館ガイドから3つを紹介!

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公開日:2017/8/8


 仕事に追われる日々を忘れさせる、非日常を体験できる場所はいくつかある。その中の1つが水族館だ。どこまでも広がる青い空間、水槽の中をキラキラと泳ぐ魚、来場者にひょっこり顔を出す可愛い海生哺乳類。うっとりするような非日常が水族館にはあふれている。

『水族館哲学 人生が変わる30館』(中村元/文藝春秋)

 『水族館哲学 人生が変わる30館』(中村元/文藝春秋)は、そんな水族館の魅力を語るガイド本だ。しかし本書、ただ水族館の魅力を紹介しているわけではない。著者の中村元氏は、水族館プロデューサーという仕事をしている。人が生きる上で必要なうるおいや哲学が得られ、知的好奇心が生まれる展示を提供する、役に立つ水族館を作り上げる仕事だ。


 本書は、そんな中村氏が水族館の「真の価値」を紹介する1冊なのだ。この「真の価値」とは……水族館の常識の枠を越えた「展示」。つまり「命」を最大限見せて伝えることだ。真の価値を有している水族館を、全国から30館選りすぐり、本書で紹介している。したがって、水族館の見どころを紹介する一般的なガイド本とはちょっぴり内容が違う。いわゆる玄人向けといったところだろうか。ここからは本書より、この夏行ってみたい、「命」を最大限に「展示」する水族館を3つご紹介したい。

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■名古屋港水族館(愛知県名古屋市)

 本書によると、名古屋港水族館の最大の魅力は大規模な水槽にある。水中に浮かぶ巨大なシャチの親子。自然の海でしか見られないイルカの全力の泳ぎも見られる。まるで太平洋のようだ。本記事で掲載した写真は、「マイワシのトルネード」。銀色に輝く無数のイワシが、命の網目のように集まり、躍動感ある芸術作品となっている。

■アクアマリンふくしま(福島県いわき市)

 アクアマリンふくしまは、東北で最大の水族館。それに加えて、自然科学の観点から生物を展示する従来の水族館とは違い、海や川を地理学的に見て、そこで暮らしてきた日本人と自然とのつながりを歴史学的・文化的にとらえて展示している。館外から館内に至るまで、ニッポンの自然景観が目白押しなのだ。文字解説に頼らず生物の展示によって、福島の地理的な知識を分かりやすく紹介し、豊かな海産物に支えられてきた福島の生活や産業を来場者に理解させる。人文科学系水族館の真骨頂がここにある。

■琵琶湖博物館(滋賀県草津市)

 琵琶湖水族館のテーマは「湖と人間」。人の暮らしや文化から、琵琶湖という存在を考え、その価値を展示する博物館だ。深い湖底の岩礁の幻想的な水槽、ビワマスの大群が泳ぐ景観。日本で最も大きな湖であり、世界でも3番目に古い「古代湖」の魅力を最大限に展示している。写真に映る琵琶湖の深場の岩礁と水面からうっすら日が差す光景は、古代湖の歴史をありありと感じさせてくれる。


 水族館の持つ魅力は、水が映し出す圧倒的な青さと海生動物たちの競演にある。その2つの魅力を「展示」という方法で、より魅力的に、より際立つよう来場者に見せている水族館が本書で紹介されている。圧倒的な非日常は、美しさを超えた壮観となり、人々に感動を誘う。本書の写真を見る限り、どの水族館も一度は行ってみたいと思うものばかりだった。

文=いのうえゆきひろ