後頭部のわずかな毛でフサフサに!? 危険な美容外科医院とは?
公開日:2017/8/21
「美容医療」を考えたとき、どのような方法で美容外科を選びますか? 発達した美容医療を受けるためのノウハウが書かれた『美容格差時代 進化する美容医療、その光と影』(大竹奉一/ディスカヴァー・トゥエンティワン)で、美容医療ジャーナリストとして20年以上活動を続ける著者の大竹奉一氏は、これまで100人以上の医師にインタビューし、1000件以上もの美容医療トラブルの相談を受けてきた中で、「正しい情報が不足している」「医療の名を借りてひどいことが行われている」と実感したと語る。
日本では医師免許さえあれば、どんな科のどんな治療もできるそうだ。そのため、メスを握ったことがない医師でも、美容外科医として患者の顔にメスを入れることができるのだ。こうした医師が美容外科には相当数いると著者は述べる。しばしば死亡事故を起こし、マスコミで報道される、大手美容外科に勤務していた医師へのインタビューでは、「年間50億も広告費を使っているんだから、一人の医者が一日に10人以上の患者さんを手術しないと成り立っていかない」と指示された話など、驚きの実態が明かされている。
本書によると、厚生労働省が実態を把握することを放置している「美容外科」には、「無限の自由」があるという。だが、保険診療の医院のように、待っているだけでは患者はこない。そこで、「美容医療」という商品を売るための激烈な競争が行われるのだと著者は述べる。
莫大な費用をかけたCM、雑誌やインターネット広告。また、悪質な「相談サイト」の存在も挙げられている。契約している美容外科医院を紹介し、美容外科医院から相談料を取るビジネスであり、紹介されてきた患者は、心得のない医師に手術されたうえ2~3割高い料金を支払うことになるそうだ。
4大新聞は美容外科についての情報をタブーとし、その他大手メディアは、美容外科医院の広告が出稿されているため、美容医療問題を取り上げない。NHK「クローズアップ現代」においては、クライアントがいないからこその斬りこんだ内容の話ができたと、大竹氏は語る。
美容外科医院の良し悪しを見極めるのは至難の業だ。本書では、「よい医師の選び方」とともに、著者が責任を持ち、掲載料・広告料・協力費などとは一切関係なく作成したという「信頼の名医リスト」を掲載している。また、プチ整形やアンチエイジングのほか、脱毛や消臭など、最新の美容医療も丁寧に紹介されている。美容医療を受ける・受けない、どちらにしても正しい知識とリテラシーが必要だ。
文=泉ゆりこ