2030年に“大観光時代”が到来! 日本が「世界一訪れたい国」になるポテンシャルの有無は?

社会

公開日:2017/8/22

『世界一訪れたい日本のつくりかた 新・観光立国論【実践編】』(デービッド・アトキンソン/東洋経済新報社)

 先日訪れた、あるデパートのエレベーターの中。気づくと、自分以外はすべて外国人ということがあった。ここ数年、街を歩くと確実に外国人が多く目につくようになったのは間違いない。実際、2007年の外国人観光客数は約800万人だったが、2016年には2400万人を超え、この10年間で3倍に増えているという。

 2020年、東京オリンピックの開催が決まり、政府は2020年に4000万人、2030年に6000万人の訪日外国人観光客数を目標に掲げている。オリンピック開催年は、必然的に日本を訪れる外国人が増えることは間違いない。が、オリンピック後もはたしてそう簡単に増え続けていくのだろうか。

 『世界一訪れたい日本のつくりかた 新・観光立国論【実践編】』(デービッド・アトキンソン/東洋経済新報社)の著者、デービッド・アトキンソン氏は、「“やるべきこと”をやれば、日本は“世界一訪れたい国”となり、この目標も簡単にクリアできる」と断言する。

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 氏は、滞日28年のイギリス人。オックスフォード大学で「日本学」を専攻し、現在は、日本の国宝・重要文化財の補修を行う会社の社長を務めている。日本の歴史や文化に精通しているだけではなく、長年にわたり証券会社のアナリストであった氏は、豊富なデータに基づいた独自の分析で、日本が観光大国になる方法を本書で示している。

 氏によれば、現時点の「世界経済において、“観光産業”はエネルギー、化学製品に次ぐ“第3の基幹産業”」だという。今後、全世界の「国際観光客数」はさらなる増加が予測され、2030年には地球上の5人に1人が海外旅行を楽しむ「大観光時代」の到来が見込まれる。

 日本は、観光大国になる4条件「自然・気候・文化・食」をすべて満たしている稀な国であるから、世界に誇る「観光大国」になれるポテンシャルを持つ、と氏は確信する。だからこそ、いくつかの点を改善すれば、観光は停滞している日本経済に良い効果をもたらす「希望の産業」になるのだという。

 ここで氏の提言する「やるべきこと」とは何なのか紹介しよう。

・訪日観光客の国別の戦略を立てよう
 →アジアからの集客だけではなく、ドイツ人をターゲットに。
・「昭和の常識」を捨てて、質を追求しよう
 →量より質、満足度を高めてリピーターを増やす。
・「長く滞在してもらう」ことを考えよう
 →自然観光の方が長期滞在になり、観光収入が増える。
・「誰に・何を・どう伝えるか」をもっと考えよう
 →観光情報はネイティブに作ってもらい、外国人に理解できる表現に。
・「高級ホテル」をもっと増やそう
 →「5つ星ホテル」を増やすことで観光収入が増える。
・あらゆる仕事を「観光業化」しよう
 →文化もスポーツも観光業化する。

 各々の提案が、我々日本人が、これまで当然のこととして考えていた日本の観光の“常識”を覆すもので、目からウロコ的な提案も多い。

 氏の言う通り、観光は、これからの日本を高度経済成長時代とは違う方法で豊かにしていく「希望の産業」だ。それと同時に、日本での観光体験が、外国人観光客ひとりひとりにとって、日本に対するポジティブなイメージを持つ機会になるのなら、観光はまたとない「平和産業」にもなりえるのではないだろうか。

文=森野 薫