性欲旺盛な妻は東大卒美人タレント弁護士!「妻に仕えて、性処理も担当してます」専業主夫の格闘記
公開日:2017/8/24
イクメンがもてはやされている。今や子育てに積極的であることは「いいオトコ」の条件のひとつに数えられるようだ。しかし現実はそんなに甘くはない。
厚生労働省が今年5月に発表した、2016年度の男性の育児休業取得率は3.16パーセント。この数字は、前年度より0.51ポイント増加し、1996年度の調査開始以来最高だという。女性の育休取得率は81.8パーセントで、前年度より0.3ポイント増加した…この調査結果、よいニュースのように聞こえるが、「増加」「過去最高」という言葉に騙されてはいけない。
国として掲げた2020年までの男性の育休取得率の目標は13パーセント。ケタ違いでとても達成が見込めそうにない。今後、外部有識者会議で男性の育休取得率を上げるための施策を検討するというが、果たしてどうなることやら。
男性の育休取得率が上がらない理由は、本人も含めてまだまだ“育児は女性が中心となるべき”という意識が根強く残っているからだろう。そんな旧態依然とした考えがはびこっている限り、改善は期待できない。
『おっぱいがほしい!男の子育て日記』(樋口毅宏/新潮社)は、東大エリート美人タレント弁護士と結婚した、自称ハードボイルド作家・樋口毅宏の子育て奮闘記…というよりも、エキセントリックで性欲旺盛な妻との格闘の記録+愛児との蜜月の日々の記録だ。
著者本人を取り巻く環境が特殊すぎて、普通の共働きの子育て夫婦には実質的にはあまり参考にならないかもしれない。しかし、「子育てはこの世で一番ハードでクリエイティブなワークだ!」と言い切る著者の親バカぶりや、子供の奴隷と化して右往左往しているさまは、子育てに悩みを抱えたママたちを解き放つと同時に、まだ充分に子育てに参加できていないパパたちを刺激すること間違いなしだ。
赤ん坊という御主人様と、大黒柱という名の妻に仕えて、性処理も担当しています。ついでに「小説を書け」と命令がでています。「寝なくていいから」と。毎日が「心の千本ノック」です。なぜこの歳になって。
頑張っているのに認めてもらえない、そんな悲痛な叫びは、世間一般の専業主婦の視点と重なり、「その気持ちは痛いほどわかる」と著者。
愚痴弱音を吐きながらも、子育ての日々は休みなく続く。自分に子供ができると親の気持ちがようやくわかるようになるというが、最終章の「父へ」は、それまではおもちゃ箱をひっくり返したような内容だった本書をピリッと引き締めて、爽やかな風のような読後感さえ運んできてくれるようだ。
新しい子育ての形は意外に身近なところにあるのかもしれない。さまざまな問題を解決するヒントを見つけられるだろうか。頭を柔らかくしておくために、本書はうってつけの1冊なのである。
文=銀 璃子