なぜ日本は米国の意向を「拒否」することができないのか? 日本と駐留米軍の“いびつな関係”の真実
公開日:2017/8/23
8月5日、オーストラリアで垂直離着陸輸送機オスプレイが墜落し、乗員3名が死亡した。この事故を受け、日本政府は米軍にオスプレイの飛行自粛を要請。というのも事故機は沖縄県の米軍普天間飛行場に所属していたのだ。しかしこの要請は、米軍によって直ちに拒絶されたことが8月7日、琉球新報他のメディアで報道された。そして8月11日、防衛省は米軍の安全説明に理解を示し「オスプレイの飛行再開を容認する」と発表した(毎日新聞他)。
え、日本って駐留米軍の言いなりなの? と、そんな疑問に駆られた人もそうでない人も、とにかく一読してほしいのが、こうした日本と駐留米軍の“いびつな関係”の真実に迫った『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(矢部宏治/講談社現代新書)だ。
この夏、沖縄へ飛行機で向かった人は多いだろう。その際に那覇空港に着陸する前から、けっこう長い間、低空飛行態勢をとることに気づいただろうか? 本書によれば、これは乗客に沖縄のきれいな海を観賞させるためのサービスではない。高高度空域を米軍機用に空けなければいけないという、米軍が保持する制空権に基づくものなのだ。
つまり、日本なのに、その上空は米軍のコントロール下に置かれている。しかも本書によれば、沖縄のみならず「日本の空は、すべて米軍に支配されている」(第一章タイトル)という現実があるのだ。
日本人の好きなように日本の空は使えない。では、国土はどうか? これに関しても驚愕の事実が知らされる。本書によれば、米軍は(やろうと思えばだが)日本全国どこでも好きに基地を造れるし、訓練・演習を行うこともできる特権を有しているのだ。
では、国民は? まさかと思うだろうが、現状の日米安保条約下でいざ日本が有事状態に入った場合、自衛隊を指揮するのは総理大臣ではなく米軍。つまり、自衛官という日本人の命は、米軍の手に委ねられることになるわけである。
著者は、こうした日本の現状の源流を、1950年に勃発した「朝鮮戦争」へとさかのぼり、その時代以降、憲法を含む国内法や、日本と駐留米軍との間で交わされた数々の「条約+密約」を丹念にひもとき、分析していく。
そして見えてくるのが、日本の現状と将来を決定づけている「日米合同委員会」という「日本人官僚+米軍人」で構成される密室組織の存在であり、いつの間にか出来上がってしまった「米軍>日本政府」という“いびつなパワーバランス”なのだ。
いま私たちが知るべきことは、「日本人が思う以上に、日本はヘンな国」という現実であり、根拠に基づいた事実だ。それを知るには、本書が最適だろう。米軍関係者は(仮にスパイでも)パスポートコントロールを経ることなく基地から入国し、好きに日本国内を徘徊・闊歩し、仮に犯罪に手を染めようと、無罪放免を得る方法は幾通りもある。
治外法権は決して基地内にとどまらない。日本全国が、米軍の治外法権下にあるという現実まで、本書は明かしている。
そして著者は、「まず、沖縄基地問題をわが身の問題として考えよう」と提案する。
おそらく2020年、墜落事故が相次ぐオスプレイは東京・横田基地にやってくる。これまで沖縄問題に無関心だった関東の人たちが、米軍問題に関心を向ける絶好のチャンスともいえる。その時まで残り3年。手始めに本書を一読し、なぜ「米軍にものが言えないのか?」「言いたければどうすればいいのか?」を、日本人のだれもが考えてみるべきなのだろう。
文=町田光