「有頂天家族」はまだまだ終わらない!原作の森見登美彦氏の自筆コメント到着。「小さいころに読んだ漫画は『キン肉マン』と『ドラゴンボール』」
公開日:2017/9/5
数々の謎を残しながらも放送終了したテレビアニメ「有頂天家族2」。新キャラクターが登場したり、家族や兄弟の関係性に変化があったりと、さまざまな見どころがあった。ところで、原作の森見登美彦氏はこのアニメをどう見ていたのか——? ぜひお話を伺いたく、京都在住の森見さんに幾つかのメールインタビューをお願いしたところ、なんとすべての質問にお答えいただいた。ここでは、正真正銘、森見氏の自筆コメントを紹介する。
答えていただいた内容は、アニメの第2期で気になったキャラクターやエピソードだけでなく、本作の舞台でもあり、森見さん自身もこよなく愛する京都の話や、影響を受けたアニメや漫画の話まで。森見氏が綴る原作小説は三部作であることがすでに告知されているが、その新作が登場するまでに、ぜひアニメのBD-BOXを観て備えておきたいところだ。
Q1:今年1月、下鴨神社で「有頂天家族2」の成功祈願をされていますが、キャスト陣とアニメについてお話はされましたか?
森見:二代目役の間島(淳司)さんが「二代目は何を考えているのか分からなくてムズカシイ」と仰っていたことは覚えています。第一部では弁天が謎を体現する存在でしたが、「有頂天家族2」では二代目がその役目を担っているのかなと思いました。あと、能登麻美子さんはすでに最終回の弁天と矢三郎の最後のやりとりに向けて気を引き締めておられました。ありがたいことでした。
Q2:アニメ放映前、新キャラクターのデザイン画を見て放送を楽しみにされていましたが、実際に放送をご覧になって、新キャラの意外な一面を感じることは? また、より一層愛着が深まったキャラクターはいましたか。
森見:アニメとしてあらためて観るとやはり弁天が哀れで胸が痛みました(自分で書いておきながら……)。矢一郎と玉瀾のやりとりはいっそう可愛くなっている気がしました。アニメになると自分で書いているときよりも純度が高くなる面もあります。下鴨家の母はあいかわらず愛らしく、狸谷山不動のおばあちゃんもステキでした。そして原作を書いたときにも気に入っていましたが、星瀾がたいへんよかった。放映後、しばらく森見家では「おふーッ!」が流行語となっておりました。
Q3:「有頂天家族2」のアニメで、特に気になったシーンを教えていただけますか。
森見:放送前から楽しみにしていたこともあり、やっぱり地獄の場面が印象深いです。狸姿の矢三郎をぶらさげた弁天が飛んでいき、空から地獄の全景を見下ろすところはゾクゾクしました。
Q4:金閣銀閣は、アフレコでアドリブが足されることがよくあるそうですが、そのシーンを観てどう思われますか?
森見:金閣銀閣の破壊力は凄まじいもので、アフレコ現場でも笑いが絶えませんでした。本当に面白い。金閣と銀閣がそもそも狸界ではちょっと浮いている存在なので、それぐらい自由でアグレッシブなぐらいで丁度いいのかもしれません。「有頂天家族2」は深刻な展開も多かったので、金閣銀閣たちの阿呆さによってバランスが取れたところもあります。本人たちはいちおう悪役っぽいことをしてますが……。
Q5:このシリーズを書かれているとき、とりわけ描くことに面白さを感じるのはどのキャラクターですか?
森見:「赤玉先生」「弁天」「二代目」「鞍馬天狗」といった厄介な天狗たちと矢三郎のやりとりがうまく書けたときはたいへん気持ちがいいです。天狗たちのキャラクター、矢三郎の老獪さが際立つからです。とはいえそれを書くのはけっこう気を遣うところがあり、単純に楽しいのは金閣銀閣と矢三郎の阿呆なやりとり。しかし金閣銀閣と矢三郎がやりあっているだけでは物語が全然進みません。
Q6:ここで、ダ・ヴィンチニュース“アニメ部”にちなんだ質問を。ご自身の作品以外でアニメ作品を好んで観られることがあれば、注目されている作品を教えてください。
森見:ちょっと前のものでしたら、「かみちゅ!」「けいおん!」「化物語」「キルラキル」あたりはDVDを買っております。
Q7:10歳から小説(最初は紙芝居)を書き始めたそうですが、小さい頃に触れて影響を受けたアニメや漫画はありますか?
森見:宮崎駿のアニメは血肉になっているだろうと思います。小学生の頃、テレビで放送されていた「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」、「未来少年コナン」は衝撃でした。日曜日の昼間に放送されていた「ルパン三世」も欠かさず観ていました。また当時は藤子・F・不二雄氏原作のアニメがたくさんあったので「ドラえもん」のみならず「エスパー魔美」「21エモン」「チンプイ」「キテレツ大百科」なども観たように思います。読んでいたマンガは「キン肉マン」と「ドラゴンボール」であります。
Q8:海星役の佐倉綾音さんが、「有頂天家族」での好みの男性のタイプをお伺いしたとき、「あえて挙げると、矢四郎。森見先生の作品に登場する男性陣はみんなひと癖ありすぎて(笑)」と語られていました。このお話をどう受け止められますか…?
森見:佐倉綾音さんには何度かお会いしておりますが、たいへん個性豊かで愉快な人です。おそらく本人がそういう人だからこそ、癖が少なくて包容力のある男性をお求めになられるのではないでしょうか(勝手な想像ですいません)。とはいえ、私の小説に登場する男性たちはスマートでこそないものの、ひとたび「これぞ」という人を心に決めたなら無限の包容力を発揮しますぞ、と彼らのために主張しておきます。
Q9:「有頂天家族」には納涼船が登場しますが、森見先生が“京都の夏”で楽しみにしていることは?
森見:七月に入って少しずつ祇園祭の気配が高まっていくところは好きです。提灯が点ったり、祇園囃子が流れたり、山鉾が組み立てられたり……。しかし実際の宵山や山鉾巡行は人が多くて暑いので、見物に出かけるのは苦手です。怠け者なので夏の風物としては納涼床とビアガーデンを好みます。いま気がつきましたが、狸たちの「納涼船」は、納涼床とビアガーデンを合体させたものですね。
Q10:もし毛玉たちのように化けられたら、何に化けて何をしたいと思われますか…?
森見:ゴージャスな美女に化けて男たちを悩殺します。
Q11:「有頂天家族」は、森見さんにとってどんな存在でしょうか。
森見:「有頂天家族」は私にとって唯一のシリーズ物というだけでも特別ですが、そこに「アニメ化」ということが加わって、いっそう特別なものになりました。第一部「有頂天家族」がアニメ化され、それを踏まえて第二部「有頂天家族 二代目の帰朝」を書き、それもまたアニメ化され、さらにそれを踏まえて第三部を書くことになります。こんな状態に追いこまれるとは第一部を執筆したときには想像もしていませんでした。物語そのものの規模も拡大の一途を辿り、作品の内も外もチャレンジングとしか言いようがありません。前門の虎、後門の狼です。おそるべきことです。おふーッ!
アニメ「有頂天家族2」のBD-BOX 上巻は現在発売中。10月13日(金)に発売されるBD-BOX 下巻には、「京都有頂天祭(仮)」のイベントチケット優先販売申込券が付属します。
構成:吉田有希、撮影:澁谷征司
有頂天家族2
■「有頂天家族2」BD-BOX 上巻
http://uchoten2-anime.com/product/bd/bd_01.php
発売中
価格:1万8,000円(税別)
本編2ディスク+ドラマCDのデジパック豪華仕様
第一話〜第六話収録
■「有頂天家族2」BD-BOX 下巻
http://uchoten2-anime.com/product/bd/bd_02.php
発売:10月13日(金)
価格:1万8,000円(税別)
本編2ディスク+ドラマCDのデジパック豪華仕様
第七話〜第十二話収録
※「京都有頂天祭(仮)」イベントチケット優先販売申込券が封入
■「大有頂天祭’17」
http://uchoten2-anime.com/special/uchotensai17.php
日時:2017年10月15日(日)
①昼の部:12時開場/13時開演(予定)
②夜の部:16時開場/17時開演(予定)
会場:片柳アリーナ(日本工学院 蒲田キャンパス内)
料金:5,800円(先着購入券・全席指定)
出演:櫻井孝宏・諏訪部順一・吉野裕行・中原麻衣・能登麻美子・間島淳司・milktub/fhána ほか
※朗読劇は昼の部・夜の部とも同じ内容です。