「東大王」伊沢拓司くんも実践! 東大生の83%がリビング学習。みるみる成績が上がる脳科学的なワケ

出産・子育て

公開日:2017/9/7


 一昔前は、子どもの学習環境として個室が必要と思われていた。しかし、子どもの学習机はリビングに置く。もしくは、学習机は子ども部屋でも、主な勉強場所は家族と集まるリビング。そんな“リビング学習”が頭のいい子を育てるということが最近、よく言われている。果たして、それは本当なのか?

■リビング学習は勉強へのハードルを下げる

 リビング学習をすると、なぜ頭がよくなるのか。16万人の脳画像を分析し、賢い子の脳を知り尽くした東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授は、その効用についてこう語る。

「たとえば1階のリビングダイニングで食事をして家族団らんしたり、テレビを見たりしたあとに、2階の自分の部屋で勉強しようとすると、勉強へのハードルが非常に高くなります。寒い冬なら、なおさらですよね。けれどもリビング学習なら、ごはんを食べたあとに3歩で勉強にとりかかれます。勉強とそれ以外の境界をなくし、生活の一部のようにすると勉強がいやだという感覚はなくなる。ごはんを食べてのんびりしたあとに『さあ勉強するぞ』となるから、そこにハードルができて勉強がいやになるのです」

 勉強だけでなく、仕事や趣味、すべてにおいて、そこに介するハードルはできるだけ低くすることで、いやなことといやでないことの境界がなくなるという。

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■ひとりきりの個室よりも勉強に集中できる?

 リビング学習の大きな効用は、もうひとつ。集中力がつくということだ。
 リビングでは当然、親はテレビを見たり、きょうだいはゲームをしたりしている。家族それぞれが好きかってなことをやっている状況の中で勉強するわけなので、いやがおうでも集中力がつくのだ。逆に言うと集中力をつけるには、リビング学習こそ効果があるともいえる。


■リラックスできる空間だからこそ勉強もはかどる

 リビング学習のメリットは、東大生の子どものころの体験談からも読みとれる。

「リビングで勉強をすれば、わからないところがあれば母にすぐに聞けるし、それに関連したことも教えてもらえる。疲れたら愚痴も言えるので、私は部屋でするよりも、リビングでするほうが好きでした。家では食事をするテーブルとは別に家族が勉強したり、事務作業をするテーブルがありました。母はそこで、子どものために漢字や計算の問題を手作りしたり、自身も資格試験の勉強をしたりしていました」(教養学部卒のIさん)

「リビングは、家族が集まる安全基地という感じでした。みんなが安心して好きなことをするリラックスする場なので、僕も安心して勉強できました。勉強しているときに家族に話を聞いてもらえると、こちらはストレス解消になったし、頭の整理もつきましたね」(理学系研究科のTくん)

「大学受験まで家族が出入りする騒がしいリビングで勉強していましたね。いまだに自室にこもるのが好きではないようです。そばで勉強していると、こちらもどういうことをやっているのか内容がよくわかりますし、中学受験のときはよくいっしょに問題を解いたり、添削したりしましたね」(医学部卒のSくんの母親)

■リビングをあえて勉強仕様にする必要はない。慣れ親しんだ居心地の良さがポイント

 リビング学習は、子どもがリビングテーブルに勉強道具を持ち込むケースもあれば、子どもの学習机そのものをリビングに置くケースもある。

 どちらでもよいが、リビングをあえて勉強仕様にする必要はなく、あくまでも子どもにとって生活感のある居ごこちのいい空間にすること。ただし勉強しやすいように、テーブルは広く使えるようにし、最低限の収納環境もととのえてあげるとよいだろう。

 図書館やカフェで勉強する人も多いが、これは飽きてきたときには有効だが、効率面でいうと実はあまりよくない。やはり普段の環境のほうが、どこに何が置いてあるかなどを、無意識で把握しているので集中しやすいのだ。

 実際、東大生にリサーチしてみると「83%がリビングで勉強していた」と主婦の友社から発行された本、『東大脳の育て方』にもある。

 本書は、勉強ができる子の代名詞である東京大学の現役学生、卒業生、その親たちに、子ども時代の生活習慣や親との関わりについてインタビューを重ね、その共通点を解き明かした一冊。大人気のクイズ番組、TBS「東大王」で人気の伊沢くん、水上くん、鶴崎くんの子ども時代にも触れるなど、実際のエピソードをもとに、賢い子の脳を知り尽くした東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授が解説を加えている。

文=池田純子
写真=Cultura Creative/アフロ 
イラスト=奈良 恵(asterisk-agency)