連載時から大反響! 「ぬいぐるみのニャンコ」新作絵本第2弾は、捨てられた子猫を救った「ニャンコ」の子育て! ヒグチユウコ『いらないねこ』
更新日:2017/11/11
猫というのはつくづく不思議な生物である。猫と暮らしはじめて半年を迎えるいま、そんなことをしみじみと思っている。とくに不思議なのは、犬のような愛想があるわけではない(むしろとてつもなく無愛想である)にもかかわらず、その存在をどうしようもなく愛しく感じてしまうことだ。
そしてこの度、猫の不思議な魅力を存分に感じられる絵本『いらないねこ』(ヒグチユウコ/白泉社)が発売された。本作はねこのぬいぐるみ“ニャンコ”を主人公にした『せかいいちのねこ』に続く第2弾。前作では、本物の猫になるために、猫のひげを集める旅へと出かけたニャンコ。本作では、捨てられて弱った子猫と出会い、“おとうさん”になって子育てをする話。
“いじわるねこ”や“おねえさんねこ”、本屋の“店主のねこ”たちの力を借りながら、生まれてはじめての子育てを順調にこなしていくニャンコ。心優しいニャンコからたっぷりの愛情をもらって、弱っていた子猫はすくすくと育っていく。そして、おとうさんであるニャンコと、ほとんど変わらない大きさにまで成長した。
しかし物語は、ここで「めでたしめでたし」とは終わらない。ニャンコの持ち主である“おとこのこ”やその“おかあさん”には子猫の存在を隠していたのだが、ある日とうとう見つかってしまうのだ。そして子猫はカゴに入れられ、どこかへと連れて行かれてしまう。
その後、子猫はやさしい飼い主のもとにもらわれていったことがわかったものの、精一杯の愛情をそそいで育てた子猫との突然の別れに、ニャンコはさみしさを隠しきれない。
そんなとき、子猫がもらわれた家を逃げ出したという知らせが入る。あわてて子猫がいるという本屋へと向かうニャンコ。複雑な状況に直面したニャンコが、物語のラストでどんな選択を下すのか。その切なくも心あたたまる展開はぜひ、自分の目で確かめてほしい。
絵本とは思えないほど奥行きのある物語に、ヒグチさんが描く独特なタッチのイラストがあいまって、唯一無二の魅力を放っている本作。とくに、緻密に描き込まれた猫たちの毛のもふもふ感は、イラストとわかっていてもつい触りたくなってしまう。
そして、本作を読み終えたときに感じたのが、もしかして「超・無愛想」なうちの猫にも、愛情深い一面があるのかも……?ということ。ヒグチさんが描く猫の魅力を堪能できるのはもちろん、飼い猫への見る目が変わる一冊でもあった。
文=近藤世菜