家中ゴミだらけ、まともな食事が出ないため常に栄養失調…“汚屋敷母”のもとで育った娘が見つけた、自分なりの片づけ方法
更新日:2017/9/26
今ではすっかり聞き慣れた言葉「毒親」。関連する書籍は多数出版され、中でも過干渉と非常識な「毒母」の呪縛から逃れるまでの葛藤を描いた『母がしんどい』(田房永子/KADOKAWA 中経出版)は話題を呼んだ。
『母を片づけたい 汚屋敷で育った私の自分育て直し』(高嶋あがさ/竹書房)は、そんな『母がしんどい』の「毒親ぶり」に加えて、「家の中が汚すぎる汚部屋住人」である実母とのエピソードと、自立し、自分なりの片づけ方法を見つけるまでが描かれたコミックエッセイだ。
第3者が「こっちのほうがしんどいのでは?」と勝手に判断するのは心ない失礼な話だとは思うが、「毒母」+「汚部屋の住人」というのは、「混ぜるな危険」の最悪な組み合わせではないだろうか。
著者の家庭は、家中ゴミだらけで、ネズミの毛やフンが散乱し、小さなゴキブリが入り込んだご飯や腐って緑がかったサイコロステーキが出るという食卓。ゴミを片づけようとすると、母親は「勝手に捨てるな!!」とキレ、暴力をふるうこともあったそうだ。まともな食事が出ないため、著者も弟も常に栄養失調だったとか。
加えて、娘の成長や成功をひがみ、「男とベタベタしやがって」「生理痛は甘えているからだ」など、著者の女性性を貶めるような発言も多く、また、子どもには話すべきではない両親(夫婦)の性のことなどを、あけすけに子どもに聞かせるなど、常識が通じない「毒親」っぷり。
本作は、そういった母親に苦しめられ、決別した後、そのような環境で育ったことによる「片づけってどうやるの?」「キレイってどういう状態?」と悩みを抱える著者が、試行錯誤しながら自分らしい「片づけかた」を学んでいくもの。その様子が、重くなり過ぎず、コメディチックに描かれている。
現在は母親と別居しているという著者だが、自身の「収納下手」と向き合うと、「もしかして私も本当は母と同じように汚いのが好きなのでは?」という恐怖にとらわれたという。そこで著者は、様々な書籍を読んだり、ネットで調べたりして「片づけ」を積極的に学んだそうだ。
一つに「アクション数を減らす」という考え方が大いに参考になったとか。アクション数とは、「目的の物を取り出すまでの動作の回数」のこと。これが少なければ少ないほど、部屋は片づき、掃除もしやすい。
そこでたどり着いた形が「浅く」「すぐ見渡せるように」収納すること。入れ物も透明にすることで、一目でどこに何が入っているのか分かりやすいように工夫。詰め込んで下の方に入ってしまった物や、細々した物をレジ袋に入れて引き出しの中に保管……といったしまい方をやめ、「見えなくなった物は失くなった物と思え!」がモットーだそう。
子どもは生まれる環境を選べないので、毒親&汚屋敷住人の母親がいることは、どうしようもないことだ。けれど、努力次第で、子どもはその後の人生をよい方向に変えられる。そういった生きる強さも感じられたコミックエッセイだった。
文=雨野裾