路肩に男性の死体が…『クレイジージャーニー』の丸山ゴンザレスが見た世界中のヤバすぎる危険地帯とは?

暮らし

更新日:2017/9/26

『世界の混沌(カオス)を歩く ダークツーリスト』(丸山ゴンザレス/講談社)

 この夏、海外に出かけた方も多いのでは? 旅の目的は人それぞれだが、気分転換や癒しを求め、情報量の多い人気の観光地を選ぶのが一般的で、危険と言われる地にあえて行こうとする人は滅多にいないはず。だが世の中には、私たちが目を背けがちな世界の暗部や闇に目を向けて、危険な場所を旅する人もいる。

 TBSテレビ系列で放送されている『クレイジージャーニー』。「独自の視点やこだわりを持って世界&日本を巡る“クレイジージャーニー”たちがその特異な体験を語る」番組だ。個性の強い「ジャーニー」の中でも、観たあとに眠れなくなるような衝撃のレポートで印象的なのが、世界中の危険地帯を取材するジャーナリスト、丸山ゴンザレス。放送時間内で伝えきれなかった詳細な情報をまとめた『世界の混沌(カオス)を歩く ダークツーリスト』(丸山ゴンザレス/講談社)には、平和で安全と言われる国に住む私たちにとって、にわかに信じがたい内容が綴られている。

■麻薬戦争が続くメキシコの国道の路肩には男性の死体が…

 トランプ大統領が国境に壁を作るとしているメキシコは、2006年頃から麻薬戦争が続き、戦地以外では、地球上でもっとも危険な状況にあるという。一般市民が巻き添えになることもあり、2016年だけで死者数が2万人を超えたとか。著者が現地を訪れた際も、国道の路肩に男性の死体が転がっているのを発見。本書にはその衝撃の写真も掲載されている。メキシコで生産された麻薬は、アメリカに流れる。アメリカではマリファナが合法化されつつあるといい、日本の将来にも関係してくるのではと著者は懸念している。

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 本書で語られるのは、ドラッグ、難民、貧困、ブラックビジネス、スラム街、ホームレスといった重くて暗い話題。驚くことに、その中にはセブ島や香港、ラスベガスやニューヨークといった旅行先としても人気の観光地の話も含まれている。

■留学先としても日本人に人気のセブ島にもスラム街が

 フィリピンのリゾート地、セブ島。最近は留学先としても日本人に人気だが、そんなセブ島にもスラム街がある。しかも、その場所は墓場。墓石や棺の上で寝そべったり、格子に洗濯物を干したり して、堂々と住んでいるという光景は想像しがたい。また、煌びやかなラスベガス、華やかなニューヨークには、地上ではなく、地下住人といわれるホームレスが存在する。ニューヨークでは、ホームレスがここ数年で約40%も増えて、深刻化しているそうだ。ドラッグや格差もその原因だ。

 ルーマニアではジャンキーの巣窟であるマンホールタウンに潜入。ジャマイカでは殺し屋にその殺し方を自分の体で実践させ、フィリピンの拳銃密造村では「殺すよ」と脅される。体を張ったレポートの数々は、まるでドラマのよう。だが、これらの世界はすべて現実であり、フィクションではない。著者の親しみやすい風貌と文章が、せめてもの救いだ。

 深刻な内容ばかりだが、世界情勢に無知な人にも読みやすく書かれた一冊。最近の不穏な空気には、本書に書かれていることが私たちに全く関係ないなんて言えないものを感じる。せめて、こんな現実があることは知っておくべきではないだろうか。

 

文=三井結木