大相撲秋場所が開幕!“スー女”もマニアもさらに楽しめる大相撲の舞台裏

スポーツ

更新日:2017/10/20

『裏まで楽しむ! 大相撲 行司・呼出・床山のことまでよくわかる!』(ダグハウス:編/KADOKAWA)

 相撲好きな女子“スー女”。この言葉もいつしか定着し、今や力士との写真撮影や握手会は長蛇の列ができる盛況ぶり。 自分の“推し力士”が登場すると、熱い視線と黄色い歓声で応援する姿は、まるでアイドルの追っかけさながら。本日、9月10日から始まった秋場所も、前売り券は早々に完売した。

 今場所は、横綱・稀勢の里、鶴竜、白鵬の欠場が決定している。上位に不安があることで、平幕以下の力士にも優勝のチャンスがあり、ますます盛り上がりを見せそうだ。

 そんな“スー女”はもちろん、初めて観戦するビギナーからマニアックな相撲好きまで、おすすめしたい本が『裏まで楽しむ! 大相撲 行司・呼出・床山のことまでよくわかる!』(ダグハウス:編/KADOKAWA)だ。

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■行司や呼出、床山など、相撲を支える“相撲人”の仕事とは

 本書は、相撲の基本はもちろん、表舞台で活躍する力士を支える裏方も紹介することで、今までにない相撲の楽しみ方を提案してくれる。取組や力士にばかり注目が集まるが、力士が滞りなく取組を行うには、大勢の人の力が必要だ。本書では、力士、親方、行司、呼出、床山など「相撲人」と呼ばれる相撲に携わる職業について知ることができる。

 例えば、行司の定員は45名、狭き門なのだ。そして、力士同様に階級が存在する。8段階の格付けがあり、毎年九月場所後の理事会において、経験年数と土俵上の勝負判定の良否など、行司としての資質を総合的に判断されて昇格が決まる。行司の最も目立つ仕事といえば、土俵上で取組をさばくことだ。取組中は、審判長がいる正面に背中を向けないこと、力士とぶつからないように反対方向に動くこと、そして勝敗の行方、力士の足元を見ること、これらを心がけて勝負にのぞんでいる。

 このような知識があった上で取組を観戦すると、行司の凛としたたたずまいや冷静に取組見守る視線に、目が離せなくなってしまいそうだ。

■それぞれの目的に合わせた専用スケジュール

 チケットの買い方や巡業スケジュール、本場所会場マップなど、実際に使える情報が多いのも魅力。まったくの初心者でも、本書を読んでおけば安心だ。

 「目的別スケジュール」では、スタンダード、マニアック、ミーハー、アミューズメントの4コースを紹介。それぞれに合った楽しみ方を提唱している。
例えば、初心者におすすめのスタンダードコースでは、14時15分ごろに始まる十両土俵入りに間に合うよう、13時ごろには来て、売店でお弁当などを調達するスケジュールが組まれている。比べて、ミーハーコースでは、力士が場所入りする12時ごろには入り待ち出待ちエリアにスタンバイ。ほぼ席にいないため、安めのチケットを購入すること推奨している。自分の目的に合わせたスケジュール立てに役立ちそうだ。

■収入、福利厚生、恋愛事情まで! 力士の暮らしを解説

 さらに、力士の稽古の様子や、一日のスケジュールなど、マニアにはたまらない情報も盛りだくさんだ。収入や福利厚生、はたまた恋愛事情までまとめられているので、これから力士を目指す人にとっても大いに参考になるだろう。

 例えば、相撲部屋の食事といえば、ちゃんこ鍋を思い浮かべる人も多いのでは。しかし、「ちゃんこ」は力士が作る、または食べる料理すべてを指す言葉。食卓には、鍋のほかに、サラダや刺身、時にはパスタやカレーが並ぶ日もあるそうだ。そして食事は1日2回。食べる順番も番付順と決められている。まず親方衆や関取衆から食べはじめ、その間若い衆は立って給仕をしているのだとか。昔は、若い衆が食べるころにはすっかり食べ物がなくなってしまっていることも多かったようだが、今はきちんと食べられるそうだ。とはいえ、朝から何も食べずに激しい稽古をしているのだから、若い衆はおなかぺこぺこ。早く食べられるようになるには強くなって番付を上げるよりほかない。

 本書は、華のある取組や力士だけでなく、それを支える“裏側”についてもまとめられていて、一般的な相撲本とは少し趣が異なる。マニアックな情報も多いが、イラストや図を使いながら、分かりやすくまとめられているので相撲ビギナーにも入門書として役立つことだろう。

 よりリアルな「相撲人」の世界を深く知ることで、今まで以上に応援にも熱が入りそうだ。この秋場所は、裏方にも注目して、それぞれの楽しみ方で取組を楽しんでみてはいかがだろうか。

文=丸川美喜