「タワーマンションは健康を害す」は根拠のないウソ!? タワーマンションのリアルがわかる、必携Q&Aガイドブック!

暮らし

公開日:2017/9/13

『住んでみなければ絶対にわからないタワーマンションほんとの話』(のらえもん/三交社)

 不夜城東京、もしくは都市と自然が入り混じる湾岸エリアの夜景を、ワイングラス片手にはるかに見下ろす──そんなドラマチックでクールな住環境を提供してくれるのがタワーマンション(以下、タワマン)である。

 しかしネット検索をすると、6月14日にロンドンで起こったタワマン火災をはじめ、階層ヒエラルキーの存在(ドラマ『砂の塔』〈2016年TBSテレビ系〉も一役買ったか?)、健康被害を告発する記事など、なにやらタワマンに対するネガティブなイメージが流布している。

 こうした風潮に対して、「そうしたウワサの多くは、タワマンに実際に住んだことのない人たちによるもの」と、主張するのが人気マンションブロガー、のらえもん氏だ。『住んでみなければ絶対わからない タワーマンション ほんとの話』(メディアソフト)は、のらえもん氏監修による、知りたいことがズバリわかる「タワマンQ&A」スタイルのガイドブック。タワマン購入を考えたい、すでに考えているといった人にとっての必読入門書だ。

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 本書では「基礎知識」から始まり、「日常」「災害」「資産価値」「購入」のカテゴリーで合計56のQ&Aが展開される。全ページが質疑応答なのできわめて読みやすい構成だ。また回答には必要に応じて図版や写真も付加されており、読者に具体的なイメージがしっかりと伝わるよう配慮されているあたりも好感が持てる。

 そして本書の特徴は、タワマンのメリットだけでなくしっかりと現実的なデメリット部分も書かれているところにあるだろう。例えば、一斉入居が開始する時期であれば、引っ越しは抽選順になること、物件によっては朝夕などにエレベーターラッシュが発生する可能性があることなどなど、生活者目線で寄せられた質問に対して、誠実に回答している。

 ではいくつかQ&A内容を紹介しよう。まずはウワサのひとつである健康被害に関してだ。タワマンを巡っては、妊婦の流産やうつになりやすいなどのウワサがある。のらえもん氏の回答はこうだ。

「タワーマンションに住むと流産しやすい」という噂は、「6階以上のマンションに住む妊婦の流産率が高かった」という統計データを根拠に書かれた本が元ネタです。そもそも超高層のタワーマンションの話ではありませんし、統計データだけで科学的な原因は示されていません。(中略)もし、本当に6階以上に住む妊婦の流産率が異常に高ければ、とっくに社会問題化しているでしょう。

 他の健康被害例に対する反証もしながら、「根拠のないウワサを信じないように」と、のらえもん氏はアドバイスをしている。

 次に火災の問題だ。「ロンドン火災のようになったら怖い」という質問に対しての回答を紹介しよう。

 のらえもん氏は日本のタワマンがロンドンと同じような火災になる可能性は極めて低いと記し、その理由をいくつか挙げている。例えば、日本のタワマンの外壁は燃えにくい部材で覆われていること/火災報知器・スプリンクラー・防火シャッターなどの火災対策が万全であること/マンション全体で戸境壁、扉、カーテン、じゅーたんなどに防炎素材を使っている/などである。

 本書収録のQ&Aは他にも「ゴミ出しは不便じゃないのか?」「資産価値は?」「階層による格差はある?」など、すべて生活者目線から「これはぜひ聞いておきたい」というものばかりである。もしタワマンについて情報を入手するのであれば、ネットのいわれなきウワサに耳を傾ける前に、本書からよりリアルで正確な情報を入手してはいかがだろうか。

文=町田光