「運が良い・悪い」は9割が勘違いだった!?――1000日間歩き続けた僧侶が悟った真実

健康

公開日:2017/9/17

『歩くだけで不調が消える 歩行禅のすすめ』(塩沼亮潤/KADOKAWA)

 往復48キロメートルの山道を1日16時間かけて歩き、それを1000日間、雪で山が閉ざされる期間を除いて足かけ9年にわたり続ける「大峯千日回峰行」を達成した超人・塩沼亮潤氏(@ryojun_shionuma)が、その荒行で得た真実を語ります。

■より忙しく、より複雑になる社会を生き抜くために

 人生には、必ず陰と陽の局面があります。私たちは、「いいこと」と「悪いこと」の波の狭間で生きているのです。

 心のなかに、針があると思ってください。メトロノームのように、針は心の動きにしたがって振れています。イラッとしたり、ムッとしたりした瞬間、心の針はマイナスのほうに振れますが、イラッとしたり、ムッとしたりする時間が長く続くと、針はマイナスの方向が定位置になってしまうでしょう。

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 こうなると、ネガティブな自分が常態化するわけです。この状態は心身の健康にもよくありませんし、ときに心の針が勢い余って振り切れ、最悪の場合は犯罪などの事態に至ることもあります。

 慣用句として用いられる「四苦八苦」という言葉は、もともとは仏教の用語で、人間が生きるうえで思いどおりにならないことを指します。

 四苦とは「生・老・病・死」。人間としてこの世に生まれてくること、年老いていくこと、病に冒されること、そして死ぬことは、どうあがいても決して逃れることはできません。

 さらに、人間であるがために味わう苦しみが4つあります。

・ほしいものが手に入らない「求不得苦(ぐふとくく)」
・愛する者と別れなければならない「愛別離苦(あいべつりく)」
・嫌な人と出会ってしまう「怨憎会苦(おんぞうえく)」
・世の中はままならないものだという「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」

 これらを合わせて「四苦八苦」と呼ぶのですが、後半の4つは、避けようがない前半の4つと違い、自分の心をうまくコントロールすることによって解決できます。コントロールとは、思いどおりにいかずイライラしたり、気持ちが滅入ったりした瞬間に、「心の針をマイナスからプラスのほうへ引き戻そう」とする意識と実践です。

 現代は忙しく、世の中はどんどん複雑になり、心の潤いを失いがちな時代です。一日のなかで、心の針がマイナスのほうに振れる瞬間はたくさんあるでしょう。

 電車内で見知らぬ人と肩がぶつかった。上司に嫌味を言われた。人から失礼な対応をされた。家族は文句ばかりを言う。仕事が嫌だ。お金が足りない。毎日がつまらない。なに一つ、自分の思うとおりにいかない……。

 嫌なことがあまりに多いと、日常生活でも不安や心配事で頭がいっぱいになってしまいとてもつらいと思います。ではそんなとき、具体的に対処すればいいのか?

■心配事や不安はあえて考えない

 不安や心配、不平不満といった心の動きは、自分の外側からもたらされることに対する反応です。外的環境は、自分ではコントロールすることができません。そんな人生の「どうにもならなさ」を、どうにかしようと思わないことが実は意外と重要です。自分の思いどおりにならないことに対して、どうにかしたいと思う心のとらわれを今すぐ手放しましょう。

 そのためには、目の前の出来事に一喜一憂しないことが肝心です。困った事態も、苦しい状況も「しょうがない」と、自然体でフラットに受け止めましょう。そう、心の針がマイナスに振れないようにするのです。そして、悩む時間を減らすことにフォーカスしてください。

 一番ダメなのは、怒りにまかせて誰かを責めたり、他人を妬んだりすること。これらは自分から不幸の海に飛び込むような行為です。

 不平不満にとらわれるのではなく、明るい要素や感謝すべきことに目を向ける努力をすることが、人生の幸せへの第一歩です。

■言われて納得!「運の正体」とは?

 お釈迦様は、『法句経』という経典のなかで次のようにおっしゃっています。

「ものごとは心に導かれ、心に仕え、心によって作り出される。もし人が汚れた心で話し、行動するなら、その人には苦しみが付き従う。もし人が清らかな心で話し、行動するなら、その人には楽が付き従う。あたかも身体から離れることのない影のように」

 このように、人生の「幸せ」や「不幸」というのはすべて自分の心の持ち方次第なのです。

 人間は、自分の心の向いた方向に人生のエネルギー、すなわち運気が運ばれます。その結果を私たちは「運がよい」とか、「運が悪い」とか呼んでいるだけなのです。
これが荒行を通して得た悟りの一つです。