過去のSNSを見直せば彼氏ができる!? 話題の失恋ホストによる“モヤモヤがなくなる”恋愛相談

小説・エッセイ

更新日:2017/9/25

『生き抜くための恋愛相談』(桃山商事/イースト・プレス)

 「6年間付き合った彼氏と別れてから、恋の進め方がわかりません。『いいな!』と思える人が現われて、1~2回くらいふたりで会って普通に遊んだりご飯を食べに行ったりはするものの、それ以降どうしたらいいか、イマイチわかりません」(29歳・美帆)

 こんなお悩み相談に、普通の恋愛本だったらどう答えるだろうか? 「過去にしがみついても仕方ありません」「出会いの場を広げましょう」「もっと自分をさらけ出しましょう」――そんなところだろう。しかし、『生き抜くための恋愛相談』(桃山商事/イースト・プレス)はひと味違う。現状を整理し、論理的思考で解決しようとするのだ。

 まず、美帆さんがなにに悩んでいるのかを考える。

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「美帆さんは過去と現実のギャップに悩んでいます。過去の自分は、どのようにはじめたのかも思い出せないくらいスムーズに恋人をつくることができていました。(中略)以前は当たり前にできていたことができなくなって混乱しているというのが、美帆さんの現在地です。」

 なぜこのようなギャップが生じているのか? 「我々が注目したいのは過去の恋愛です」と、著者は指摘する。

「6年間付き合っていた彼氏がいた。ということは、少なくともそれ以前には<自然に>恋愛を進めることができていたわけですが、今はそれができない。つまりこの数年の間に何かしらの変化があったと考えられます。」

 現状を整理し、分析する――。シンプルだが、これまでになかった手法でお悩みを解決していくのが桃山商事流だ。

「この数年間の経験によって美帆さんの考え方や身を置く世界が、成長や成熟という方向にアップデートされているのではないかということです。(中略)つまり、この数年間で人生観が大きく変化しているにもかかわらず、恋愛観だけがかつてのままフリーズしている。」

 コンピューターでたとえると、OSはアップデートされているのに、アプリケーションだけが旧バージョンのままになっているというのだ。美帆さん自身が変化しているのだから、昔の自分が頼りにしていた恋愛の方程式に違和感を覚えてもなんら不思議はない。

 では、どうすればいいのか? 「必要なのは『恋愛観のアップデート』という作業」だと著者は分析する。

「まず、準備段階として現在の自分を構成している要素を見直してみる必要があるように思います。かつての自分と比べ、時間やエネルギーの使い方はどう変化しているのか。仕事や趣味や人間関係などで、この数年間に追加された要素はなにか。(中略)自分の構成要素やここ数年間の変化を細かく書き出してみることをオススメします。」

 具体的な方法として、「日記やスケジュール帳を振り返ってみたり、スマホのメールや写真を眺めてみたり、インスタグラムやフェイスブックなどSNSのやり取りや書き込みを見直してみる」ことを推奨している。SNSを見直すことで、彼氏ができるかもしれないとは、目から鱗である。

 実は筆者も、美帆さんと同じ悩みを抱えている。4~5年前は好きな人ができるとすぐに恋愛に発展したのに、今はまるで進展しない…。そこで、スケジュール帳とSNSを見直し、過去と現実のギャップを書き出してみた。

・昔はSNSに自分の思いや悩みなどを赤裸々に綴っていた。今は世間体を気にして、当たり障りのないことしか投稿しない。
・昔はお金に無頓着だったが、今はお金の大切さを実感している。
・実家を出て一人暮らしを始め、自由気ままな生活を送っている。
・単純に、忙しくなった。

 以上から浮かび上がってくるのは、「恋愛の優先順位の低さ」。恋愛より世間体。恋愛より仕事。恋愛よりお金。恋愛より自由な生活――。「彼氏がほしい!」と言いつつも、実際はそれほど欲してはいないのだろう。今は無理に彼氏をつくろうとするよりも、目の前の仕事に打ち込むほうがいいのかもしれない。そんなことが見えてきた。

 本書には、「マトモな男性とのデート、直前でイヤになるのはなぜ?」「誘っても曖昧な態度の彼…これって脈あり? 脈なし?」「男にとって“重い女”ってなんですか?」など、さまざまな恋のお悩み相談とその回答が収録されている。すべての回答に共通するのは、“ズバッと言わない”。安易に、こうしなさい、ああしなさい、というアドバイスではない。あくまで論理的分析に基づいているため、一つ一つが腹落ちする。

 桃山商事は、清田隆之と森田雄飛による恋バナ収集ユニット。恋愛の悩みを抱えた女性の相談に応じる「失恋ホスト」と、そこで見聞きしたことをコラムやラジオで紹介するという活動を行っている。これまでに1000人を超える男女の恋バナに耳を傾けてきたという。なぜ彼らは、“ズバッと言わない”のか? その理由は、「ズバッと言うのはいかにも痛快だが、それって自分の解釈を押しつけたり、相手の話を勝手に要約したり、一方的に断罪したりする行為。その裏には、『相手をコントロールしたい』『マウンティングしたい』といった欲望があるから」だという。よくある恋愛本を読んで抱いていた、「その通りなんだろうけど、結局なんの解決にもなっていない…」というモヤモヤが、本書を読んでスッキリと晴れた。

 著名人たちも本書を絶賛している。

申し訳ないのですが当初、絶対下心があるんじゃないかと思っておりました。実際ぼくも失恋ホストに同席させていただいたことがあります。でもそこでは本当に女性の悩みに対して真摯に向き合っておりました。思考の枠組みを与えてくれます。自分の主体性を育むきっかけにぜひ。一徹/AV男優

恋愛相談に来るのは女ばかり。女の目に映った男を通じて、男って何かの当事者研究が始まる。『オレって何?』を知りたい男にとっても必読の書。上野千鶴子/社会学者・東京大学名誉教授

 AV男優から東大名誉教授まで激推しする桃山商事。理論派で論理的――他の恋愛本とは一線を画する本書を、すべての恋する女性たちに薦めたい。

文=尾崎ムギ子