ヒット商品は計算で作れる! ヒット商品を生み出す「足し算と引き算の法則」
公開日:2017/9/21
「けものフレンズ」や「うんこ漢字ドリル」「ハンドスピナー」、一見するとナンセンスなのに、何がヒットするかわからないのが世の中だ。マーケティングや商品開発に携わる人々は、移り気な消費者に頭を悩ませているに違いない。しかし、もし計算してヒットを作れるとしたらどうだろうか。
『ヒット商品は「足し算と引き算の法則」でできる!』(起業家大学:著、主藤孝司:監修/宝島社)によれば、歴史に名を残すヒット商品には、「足し算」と「引き算」でたとえられる共通の法則があるという。この2つの法則を理解すれば新製品の開発や、新しいサービスの展開だけでなく、企業の組織改革などにも活かせるというから興味を掻き立てられる。
本書では、過去にヒットした商品や人気サービスの実例を挙げて「足し算」と「引き算」の法則を紹介している。いったいどのような法則なのか。
■コンセプトを足し算
アイデアを生み出すには、必ず元となっているたたき台が存在する。そこにコンセプトを足していくのが足し算の法則だ。
その好例は、自動車だ。馬車にエンジンを足すことから始まり、乗り心地のために座席を足し、ゴムタイヤを足し、金属のボディを足し、シートベルトやエアバッグを足し、さまざまな装備を足していったのが現代の自動車である。
私たちが使う携帯電話も通話だけでなく、アドレス帳、メール機能、カメラ、メモ帳と、どんどん機能を足して多機能になっていった製品である。
共働きの家庭が多い最近では、家事代行サービスのスタッフが親に代わって子供の勉強をみる家庭教師サービスを始めたり、住宅メーカーが一戸建てに宅配ボックスの設置を普及させていたりと、時代のニーズを読み取った付加価値サービスを提供しているのも足し算の発想だと述べている。
■無駄とコストを引き算
足し算の法則で製品やサービスが行き着くところまで行き着くと、今度は引き算が始まるという。引き算の法則のポイントは、「絶対に外せないもの」「常識的に考えて引いてはいけないもの」を思い切って引いてしまうことだ。
自動車であれば、自動ブレーキシステムや自動運転システムである。自動車からドライバーを引いてしまったのだ。携帯電話では、たくさんあったボタンを引いてタッチパネルにし、音声認識もできるようになり操作を引いてしまっている。
格安航空会社のLCC(ローコストキャリア)では、お客様第一であるべき航空会社が機内サービスを引いてしまった。髪のカットのみに特化して10分1000円を売りにする床屋など、時短ブームや節約志向といった時代性をとらえた新業態が消費者を呼んでいる。
■企業改革にも足し引き
斬新なアイデアは活発な議論から生まれる。お堅くて真面目な会議では参加者も萎縮してしまい意見しづらい。積極的な意見交換を行うために、あるメーカーでは会議にお菓子を足して楽しい雰囲気を作り出した。なかには居酒屋で会議を行う企業もあるという。それまでの常識では考えられないことだ。
また社員の働き方改革が取り沙汰されるいま、引き算すべきは残業である。残業は企業側にとっても負担になる。残業を引くにはどうすればよいのか、それにはやはり業務の無駄を改善したり、旧態依然とした職場の取り決めを廃止したり、経営者にも残業ゼロを目指す決意を足す必要がある。
ヒット商品には、開発者のユニークな発想力だけでなく、現状維持に甘んじず、問題意識を持ち、どうやって改善するかという強い思いが感じられる。
ヒットを生むには、まず自分たちから惰性を引いて、行動を足さねばならないのかもしれない。
文=愛咲優詩