夢を自動的にかなえる? 『話を聞かない男、地図が読めない女』の著者夫婦が実践した夢のかなえ方

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公開日:2017/9/22

『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』(アラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ/サンマーク出版)

 自分を高めようと目標を設定して頑張るのだが、いつも途中で挫折してしまう…。こうした経験は、自分への自信を損なうものであり、思い出すだけでも嫌な気分になるものだ。そんな低空飛行気味の自己イメージにお悩みの方を救うかもしれない方法を、ひとつご紹介しよう。RASを利用する方法だ。

 RASとは、「網様体」と呼ばれる神経網の働きのこと。脳内で、視覚や聴覚が受け取る情報をふるいわけして、何にどのくらい注意を向けるかを判断するのだ。RASは脳内のしくみ(プログラム)なので、一度ゴールを設定すれば、あとは自動で進んでいくというのが特長。根性が足りない!といった精神論は不要だ。

 『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』(アラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ:著、市中芳江:訳/サンマーク出版)は、人生をより良いものにするために、このRASを使うことを勧める一冊だ。本書によると、RASを上手く使うポイントは、自分がどこへ行きたいのかをきちんと設定することだという。そして設定さえしてしまえば、どうすればたどり着けるのかを考える必要は一切ない。例えば、ショッピングモールで自分の名前を聞き取れという指令を与えるとする。すると、どれほど周囲が賑やかであろうとも、店内アナウンスで呼ばれた自分の名前は、他の何より優先して耳に飛び込んでくるだろう。RASは目標へ向かう情報だけを集め、それ以外の情報は排除するという性質がある。つまり、脳のプログラミングとは、自分の望みを明確に設定することだといえるだろう。

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 これだけを聞くと、どこかで読んだ自己啓発本にも書いてあったような気もするが、本書のおもしろいのは著者の実際の経験だ。著者とは、2000年に出版された『話を聞かない男、地図が読めない女』の著者である、アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ夫妻。各国で翻訳されベストセラーとなったこの本は、男性と女性での脳の違いに着目し大成功。現在に至るまで、2人に印税をもたらし続けている。夫妻は、ベストセラーを生み出せたのは才能や努力ではなく、「何の説明を聞かなくてもぱっと衝動的に買いたくなる本、著者がどんな人かを知らなくても読みたくなるような本、だけを書く」と決めたおかげだという。しかもその目標の設定は、借金と病気で人生のどん底にあるときだったそうだ。

 そのとき夫婦は、どうやってそれを達成するのかはわからなかった。だが、目標を設定したとたん、二人にある変化が現れる。今住んでいるオーストラリアより、人口が多くて大きな市場が見込めるヨーロッパが魅力的に見えるようになったのだ。そして、住む家も定めないままイギリスに飛び、電話で売り込みをかけ、一度会っただけの人の社交辞令にあえて乗っかるほどに獰猛にチャンスを求めたという。講演を開いたりテレビに出たりと、目標に近づけそうなことは手当たり次第にやってみた。こうした日々の中、ミラノを訪れた際のある夫婦げんかをきっかけに思いついたタイトルが、「話を聞かない男、地図が読めない女」だった。原稿を書いた夫婦は、ベストセラーとして売れるようになるまで、取次業者やジャーナリストに電話をかけ続けたそうだ。結果を生むのは努力の20%、80%は不発に終わるという柔軟な前提をもち、決して挫けることはなかったという。

「誰にも言い訳せず、謝罪せず、寄りかからず、頼らず、誰のことも責めない。そう決めた日から、あなたの本当の人生が始まる。」と本書の最後に締める著者。RASの働いていくさまも興味深いが、その目標の立て方が具体的で、細かく設定されていることが成功につながった秘訣なのではないか。自分は何を望むのか、他人や社会が期待するものではない、本当の望みをはっきりさせないといけないようだ。といっても焦ったり力んだりする必要はない。著者が本書冒頭で、〈人生は、きれいに手入れの行きとどいた体で安全に墓までたどりつくための旅ではあってはならない。全身が傷だらけになってすっかり疲れ果て、「まったくひどい乗り心地だ!」と、大声で泣きわめいてこそ人生だ。〉と言っているように、完璧できれいな人生なんてないのだから。今の低空飛行気味の自分も、どこかにたどり着くための通過点、必要で大事な自分なのかもしれない。

文=奥みんす