上司「教えようか?」部下「いえ、ネットで調べます」上司、涙目。そんなネット世代を育てる「知恵とノウハウ」の書!
更新日:2017/9/25
ある酒の席でのこと。部下(20代)のお酒の注ぎ方がおかしかったため、上司が「教えようか」と身を乗り出す。しかし部下はこう言い放つ。「いえ、ネットで調べるので結構です」。ムッとした上司は離席し、つかの間の会話は終了。さて、あなたならこんな部下とのコミュニケーションをここからどう展開させるだろうか。
こうしたデジタルネイティブ(90年生まれ以降の世代。ネット依存度が高い)の若手社員が増え、上司世代とのコミュニケーション・ギャップをいかに埋めるかが、会社の業績を左右する時代だ。では、デジタル&ネオ・デジタルネイティブ世代(96年生まれ以降の世代。スマホ依存度が高い)といかに接し、彼らをどう育成すべきなのか?
そのための具体的な知恵・ノウハウを授けてくれるのが、『20代の部下とうまくいかないのはなぜか? ネット世代を育てるコミュニケーション術』(岡田正樹/ポプラ社)だ。
著者はまず、他の文献や様々なアンケート調査結果から、ネット世代(20代社員)の価値観や会社・上司に望むこと、彼らの言動などの「実態」を浮き彫りにする。そして、その特性を生かしたチーム作りの仕方、ディレクション術、エデュケーション術、コミュニケーション術などを指南する。
加えて本書の特長は、著者のメッセージの矛先が、上司世代だけでなく部下・ネット世代にも向けられている点だ。各章には「上司の心得」と「部下の心得」の双方が用意され、ネット世代は本書を通して、上の世代がどんな時代を過ごし、どんな価値観を培ったのかなどを知ることができる。こうして各世代が本書を共有することで、相互理解はよりスムーズになる。
本書によれば、ネット世代は共通して、プライベートの充実を優先した「ワークライフ・バランス」を望むという。一方で会社には、かつての社畜主義を知る世代も多い。こうしたギャップの埋め方についても本書は、1章を割いて詳細なアドバイスを記している。
そんなネット世代は「ゆとり」「さとり」など、否定的なニュアンスで一括されてしまうことも多い。しかし本書を読めば、彼らこそが未来社会のイノベイターであり、そのための素質と可能性を秘めていることもわかる。その芽を摘むか、それとも本書から知恵を学び大きく育てるか、答えは明白だろう。
文=町田光