「ジジイ化」してしまう人たち――自分より「下」だと思っている相手に暴言、相手の肩書き・学歴で態度が別人…
更新日:2017/10/23
コンビニ店員やタクシーの運転手など、自分より「下」だと思っている相手や、言い返せない立場の人間には暴言を吐き、会社では上司におべっか。部下の成功に嫉妬。人事の話に興味津々。肩書や学歴で人を判断する……そういう人、身近にいないだろうか?
本書『他人をバカにしたがる男たち』(河合薫/日本経済新聞出版社)は、そういった「他人をバカにする人」=「ジジイ」たちの行動心理や、その社会背景を解説し「他人をバカにして会社にしがみつく『ジジイ』にならないための指南書」である。
一つ勘違いしないでいただきたいのは、タイトルの「男」、また本書の中で「ジジイ」と書かれているのは、「物理的に年を取った男性」ではない。ジジイとは、ジジイ的なるものの象徴で、つまり、上記したような特徴があるのなら、女性や若い人でも「ジジイ」と言えるのだ。
しかしそれでも、「ジジイ」はエリートの中高年が多い。それは中間管理職のストレスが原因だったりもするが、40代は曖昧な不安が襲う年代なのだという。
40代となり、「自分が今後どこまで昇進しそうか」といった将来像も見えてきた頃、「予想よりも出世しなかった」人たちが「このまま会社にしがみつくか? それとも新天地でセカンドキャリアに踏み出すか」と悩み不安を抱く。
「同期が先に部長になった」「年下が上司になった」と憂鬱になり「もっと評価されたい」「負け組になりたくない。勝ち組の下っ端でいいから、ぶらさがっていたい」と願い、かくして「会社にしがみつくジジイ」になってしまう。
こういったジジイにならないためには、「SOC」を高めることが重要だという。SOCとは「首尾一貫感覚」=「人生のつじつまを合わせ、困難をやる気に変える力」。SOCが高い人は苦境に屈することなく、それを「挑戦」だと捉え、「ありのままを受け入れ、人生のつじつまを合わせる」ことに長けているのだとか。
SOCを高めるためには、「高い社会的評価」「自由に決められる権利」「大切な人」「サポートしてくれる人」といった外的な力の他に、「自己受容(自分を積極的に受け入れることができる)」「人格的成長(自分の可能性を信じることができる)」「人生における目的(どんな人生を送りたいかはっきりしている)」といった内的な力があるという。特に「信頼できる人間関係を築いている」「信頼できる人がいる」という確信は、SOCの形成に大きな影響を与えるそうだ。
「私はジジイにならない」と思っていても、ジジイたちは自分がジジイだという自覚はなく、また、将来、自分がそうなる可能性も大いにある。50歳を過ぎても「万年ヒラ」が半数を超える時代、誰もが成功者になれるわけではない。がんばって働いてきた人こそ、苦境に立たされた時、「今までの努力を無駄にしたくない」と保身に走ってジジイになってしまうのだ。
そうならないために、本書を読んでSOCを高めたい。また現在、職場でジジイの存在に苦しんでいる若者も、その行動心理を知れば、怒りが薄れたり、対処方法が分かったりするかもしれない。「女をバカにする男たち」という章では「組織にみる性差のジレンマ」も書かれているので、男社会の厳しさに直面しているバリキャリ女性にもおススメしたい一冊だ。
文=雨野裾