剣が交わるその一瞬を描く! チャンバラ漫画対談一本勝負!【『ちるらん 新撰組鎮魂歌』橋本エイジ×『剣姫、咲く』山高守人】
公開日:2017/10/2
『ちるらん 新撰組鎮魂歌』コミックス19巻発売&ドラマCD化、そして『剣姫、咲く』コミックス2巻の発売を記念し、実現した対談企画。新撰組を描いた『ちるらん』と女子剣道を描く『剣姫、咲く』の二人がちゃんばらアクション漫画について語ります。
橋本エイジ(はしもと)
漫画家。徳間書店『月刊コミックゼノン』にて『ちるらん 新撰組鎮魂歌』(原作:梅村真也)連載中。
山高守人(やまたか もりと)
漫画家。KADOKAWA『ヤングエース』にてデビュー作『剣姫、咲く』連載中。
■チャンバラ漫画の同志! 自身の剣道経験を活かして。
――普段からお二人は交流があるそうですが?
橋本 山高くんとは、最近アシスタントさん経由で知り合って、去年の冬くらい?から会ったり結構スカイプで喋ったりしてます。
山高 漫画の話はもちろんですが、ゲームとかドラマの話だったり担当編集さんの話だったり…(笑)。させてもらってます。
橋本 お互い対人戦というか、剣を使ったアクション漫画をやっていて、漫画内の演出の部分で意外と共感するところも多いです。なので、そういう話をしているといつも盛り上がりますね。あとは、剣道あるあるなんかを…。
山高 そうですね。どんな練習が辛かったとか、竹刀削って軽くしたとか(笑)。
橋本 うんうん、そういう話するよね(笑)
――お二人とも剣道の経験者なんでしょうか?
山高 高校時代に部活でやってました。
橋本 僕も高校三年間くらいですね。その前は野球部とかだったんで…。
経験者だからこそ、『剣姫、咲く』はちゃんとやんないとまずいやつなんじゃない?
山高 そうですね。ちゃんとやんないとまずいんですけど…見てて面白いかって部分もあるんで、多少大げさにやったりとか、省略、短縮など、派手に見せようと心がけています。
橋本 僕も漫画的な大げさな演出っていうのはやるようにしています。漫画的面白さの表現としてですが。人体輪切りになったりとか、どう考えてもそんなことにはならねえだろとか思いつつ(笑)。
山高 リアリティはあくまで残しつつ、派手に、そして説得力は持たせる演出をしたいですね。
■ヤンキー漫画の法則を殺陣に応用!!
橋本 『剣姫、咲く』では竹刀が折れるシーンがあるんですけど、実際剣道やってたら竹刀が折れたりすることなんてないんですよ。ちゃんと折れないように、しなるように作られてるんで。けど、漫画的には面白いじゃないですか。派手だし。だから、そういう風にエンターテイメントと真面目な部分をちゃんと融合してる剣道漫画って今までなかなかなかったんですよ。
山高 難しいです。毎回、これはやっていいのか? 画面作りのためとはいえ、これは有り得ないかな、とか悩んでます。まあでも、考えすぎてもね(笑)。
橋本 バランスはいいと思いますよ。『剣姫、咲く』は漫画的に演出上、派手にしているだけで、描いてあることはリアルな「やってる人」の漫画なんですよ。だから、読んでてそういうところが完成度高いなって思っちゃいます。
山高 『ちるらん』は格好良いところだらけなんですが…静と動、張り詰めた空気感とその次の場面の作り方が非常に印象的です。静かな場面から次の瞬間、生死が決まってしまうような、無音の動きがすごいんです。ギリギリのやり取りがすごくうまく描かれてるなって。
橋本 結構気をつけてるよね。やっぱり斬り合いって一瞬で命のやり取りをするから。そのあたりは以前やってたヤンキー漫画のもあって、ガン飛ばしあった状態からの、次のページ開いた時にいきなりドンっていう動きは意識的に取り入れてます。
山高 『ちるらん』は殺陣もそうなんですけど、話の展開もそういうところがありますね。静かな流れがあって…ページめくったら一気に話が動いたり。それがすごく面白いんです。
■悪役、脇役の立て方へのこだわり!
――お互いの漫画で印象的なシーンはありますか?
橋本 俺が先でいい?(笑)俺このシーンなんだよね。
橋本 『剣姫、咲く』ってW主人公なんだけど、ここまで、この諸葉がなんの能力があるのか、この子なんなの?って状態で読み進める。でもなんか主人公っぽいんだよなって思ってたらようやくここで「見稽古」の凄いやつなんだなって分かるシーンで。ああ、よかったな諸葉、って(笑)。
山高 意図的な部分もあるんですけど、よくしゃべるモブキャラのようなイメージで序盤は見せてました。そこから、一気にこいつも実はちょっとは凄いんだぞ…って感じに。
橋本 だからこそ、ホッとしたんだよね。一見、人より先が見えるなんて言ったらちょっと地味。実際は見稽古でここまで出来たらチート能力なんだけど、チート感がみたいなのがないように見せてる。だから、凡人だけどそれだけじゃなくて、その先の才能の開花もありそう、と思わせるこのシーンは良かった。
山高 僕は『ちるらん』は岡田以蔵と芹沢鴨という二人のキャラクターが好きなんです。特に新撰組漫画として、今まで芹沢鴨という人物をここまで詳しく描いた漫画は今までなかったなって思って。『ちるらん』はもう芹沢鴨との出会いから始まりますもんね。
だから、芹沢鴨にここまで影響を受けた土方歳三や、沖田総司っていうキャラクターは、今までなかったと思うんですよ。
橋本 芹沢を嫌な奴とか、暴君、敵、みたいな扱いをし続けるのは嫌で、幕末に生きた人達ってみんな格好良いんですよ。だから、キャラクター一人一人に何かしらを持たせてあげたいなって思いながらやってます。
山高 で、殺陣としては、八木邸での芹沢鴨対沖田総司、あのシーンは大好きです。さっき話した静と動、静かながらも激しい立ち回りが、芹沢鴨の強さ、格好良さをすごく引き出してましたね。
橋本 最後のところはサイレントでやってるもんね。
山高 これがすごい緊張感で、僕はこの緊張感というか圧迫感がすごく心地よかったです。あとは画面構成、これがすごい。背景と幕末特有の暗さ。夜のシーンがすごく多いんですよ。闇討ちだったり、討ち入りだったりとか。
橋本 そうだね。本当に夜のシーン多いね。
山高 その重厚感が画面密度から伝わってきますね。それでいて、画面構成はシンプルで判りやすい。時代劇ものとしての説得力がありつつ、エンターテイメントとしても成立してて、本当に尊敬できます。
橋本 そういう意味では、山高くんの漫画はギャグシーンとか「抜き」のシーンがすごく上手い。ページをパーっとめくってても疲れない画面構成で、画力含めて、とても新人離れしてるなと思います。真面目なシーンはちゃんと逃しちゃいけないように描いてるんですけど、ちょっとしたところですかさず可愛いシーンを入れてきたり、読んでて疲れないようにできてるんです。これが初単行本でできるのはすごいですね!
■『ちるらん 新撰組鎮魂歌(19)』(漫画:橋本エイジ、原作:梅村真也/徳間書店刊)
高杉晋作の死から、戦いは新なる局面へ――。そして、新撰組に裏切者現る!?
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