コミュニケーション能力の高い人と、そうでない人の違いは? 多くの人が気づいていない本当に役立つ会話のルール
更新日:2017/10/23
長い間、私は「コミュニケーションがうまくなる書籍」を探していたのだが、ピンとくるものが見つからずにいた。コミュニケーションに関する本と言えば、「雑談がうまくなる」や「人に好かれる話し方」といった、言わば「会話下手」な人のための本と、「ロジカルな会話」「プレゼンの時に役立つ話し方」など、ビジネス向けの本と、大きく分けると2つに区分されると思う。
しかし、私が探していたのは、どちらでもない。友達との雑談に困っているわけでもなく、人見知りで初対面の人と話せないわけでもない。だからといって数億単位のお金が動く超大事なコンペのために、プレゼン力を磨きたいというわけでもないのだ。言うなれば、「仕事相手と話す時の雑談」「仕事を円滑に進めるための日常会話」を学びたかったのだ。
前置きが長くなったが、『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』(安達裕哉/日本実業出版社)は、まさしく、私が求めていたコミュニケーションの本だったのだ。
タイトルにある通り、「本当の」コミュニケーション能力とは一体何なのかということを、8000人以上のビジネスパーソンを見てきた著者が語っている。これを読むと、根本的に多くの人が、コミュニケーション能力というものを誤解しているのではないかと感じる。
また、従来のコミュニケーション上達本は「相手にいかによく自分の考えを伝えるか」という技術を紹介するものが多いように見受けられたが、本書は違う。「『伝わる』のは相手が聞きたい(見たい)と思うものだけ」と人間の本質をバッサリ。そうなのだ。人間は「自分のためにならない」「聞きたくない」と思ったことは、いかに巧みな会話をされても、ロジカルで説得力のある内容でも、「聞かない」のである。つまり、自分の話を「聞いてもらう」には、相手に「聞きたい」と思わせるしかないのだ。
では、どうしたら相手に話を聞いてもらえるのか。著者が出会ったビジネスパーソンたちの経験や、その時の会話を参考に、教えてくれている。
そもそも、コミュニケーション能力はどうして重要視されるようになったのか、その社会的な背景はご存じだろうか?
企業の「求める人材像」には、よく「コミュニケーション能力の高い人」と書かれている。その理由は、単純作業や定型的な仕事が減り、専門知識やクリエイティビティを求められる「知識労働者」が主体となって分業し、それぞれの専門分野で「協力して」一つの仕事を完遂させるようになったからだ。よって、「コミュニケーション能力がなければ、仕事にならない」というのが企業の現状なのである。
では、コミュニケーション能力とは一体何なのだろうか?
著者は述べる。「言ってしまえば『気が利くかどうか』」だと。
例えば、ある企業に新人デザイナーが2人いるとする。「ウチのwebサイトの商品ページのデザインをよくしてほしい」と抽象的なお願いした時、一人は「どうすればいいか教えてください」と尋ねる。もう一人は「問題点を整理してくる」「とても具体的に質問してくる」そうだ。
後者が、コミュニケーション能力の高い人だと言える。前者は純粋に疑問を尋ねただけだが、後者は「想像」したのだ。「なぜこの仕事をやらされているのか」「人事の意図は何か」そして、「どうすれば相手が楽か」を考えたからこそ、漠然とした質問ではなく、具体的な質問ができた。そういった「相手の要求を『気を利かせて』読み取る能力」が、真のコミュニケーション能力なのだという。
その他、「『きちんと質問できる人』になるための5つのポイント」や「『1を聞いて10を知る人』になるためのコミュニケーション術」「人にアドバイスをするときに厳守すべき6つのステップ」「こんな人は、会議に参加させてはいけない」などなど、これから就活をする若者や転職を考えている方にも役に立ち、また、「上司に一目置かれたい」「部下に慕われたい」といった、仕事場での人間関係を向上&円滑にさせたいすべての方が参考にできる「確かに!」が詰まっている。
個人的に今年一番「腑に落ちた」ビジネス書だった。ぜひ、読んでほしい。
文=雨野裾