老後のお金の心配は無用?! 定年制度が廃止された社会では年齢に関係なく活躍できる!
公開日:2017/10/6
将来のお金のこと。大切なことだと分かってはいても、考え始めると不安ばかりが大きくなり、つい目を逸らしてしまう。きちんと向き合っていないから、常に漠然とした不安を感じている。悪循環だと思うのだが、厳しい現実を突きつけられるのが怖いというのが正直なところだ。
そんな不安を抱えながら手に取ったのが『人生100年時代のお金の不安がなくなる話(SB新書)』(竹中平蔵、出口治明/SBクリエイティブ)。経済学者である竹中平蔵氏と、ライフネット生命創業者の出口治明氏が、将来のお金のことについて、それぞれの意見を述べている。根拠のない不安を払拭してくれそうな、ポジティブかつ説得力のある内容だ。
■老後のお金の不安
超高齢社会に突入した日本。平均寿命も2016年のデータで女性87.14歳、男性80.98歳と過去最高を記録し、2065年にはそれぞれ91.35歳、84.95歳になると予測されている(平成29年版高齢社会白書)。定年が60~65歳だとすると、その後、場合によっては数十年の人生があるということだ。一体どのくらいのお金があれば足りるのだろうか?
老後の不安について、竹中氏は、老後資金は「自分で貯める」のが基本だと述べる。人口が減少し働き手は不足するので、働き口が不足するということはなく、元気で働くことができれば、老後も心配はないとのことだ。そして、老後の大きな不安要素である「年金」については、保険に戻すことを主張。現在の年金は、高齢者が少ない時代に設計された制度であるため、全員がもらえるようになっている。これが「保険」であれば、支払った掛け金にかかわらず、一定の所得があればもらえないのが原則だ。さらに、国に払っている年金がもらえるかどうか不安な人には、個人年金に加入することを推奨。国に頼るだけではなく、自分で考えて準備することが大切だ。
一方、出口氏は、老後のお金については心配していないそう。定年をなくして生涯働けば、一定の収入が入ってくるからだ。年齢に関係なく働ける人が働き、若い人が高齢者を支えるのではなく、みんながみんなを支える社会にできれば、老後のお金の不安はあまりない。さらに、「将来年金がもらえなくなるのでは」といった不安は真っ向から否定する。国債が発行できれば、年金の支給を含めて予算が組めるため、財政は維持できる。国自体が潰れた時には、もはや公的年金保険どころの問題ではないので、悩んでも仕方がないというわけだ。
■これからの時代に活躍するには
老後のお金の不安を解消するには、元気に働くこと。では、変化の激しい時代を生き残るには、何が求められるのだろうか?
この問いに対して出口氏は、変化を生き残るのは「対応力」であると述べる。これは、ただ変化に対応すればいいということではなく、その状況をきちんと認識するということ。これからではなく、「今」の私たちが置かれている状況を認識することが大切だ。
ビジネスで成功したいなら「自分は何をやりたいか」というビジョンを明確に持つことが大切だと語るのは竹中氏。これは起業家に限ったことではない。お金や社会的地位よりも、自分の夢に一所懸命に向き合うことが大切なのだという。竹中氏の時代は、とにかく食べていくために働かなければならず、選択肢はなかった。しかし、現在の若者には選択肢が数多くあるのだから、「楽しそう」と思えることをやってみればいいとエールを送る。
変化が激しく、将来が不透明な時代に、不安を抱く人も多いだろう。しかし、本書の冒頭で竹中氏は問う。「かつて先が見えた時代というのがあったのだろうか、不確実性のない時代があったのだろうか」と。私たちの住む世界は、いつだって変化に富んでいる。書籍やテレビ、ネットなどで情報を収集し、根拠のない不安を取り除いていけば、自然とすべきことが見えてくるのではないだろうか。まずは60歳、65歳の定年という概念を捨て、いくつになっても元気に働けるように、今を一生懸命生きることが大切なのかもしれない。
文=松澤友子