京都の和菓子屋で感じる家族の絆にほっこり。『であいもん』最新刊が発売!
公開日:2017/10/6
なごんでほっこりして、時にちょっと切なくて、だけど笑えて、和菓子が美味しそうで。読み終わった時に自然と疲れがとれている京都×和菓子×家族がテーマの『であいもん』(浅野りん/KADOKAWA)最新3巻が、10月3日(火)に電子版が配信されました。相変わらず、一果(いつか)ちゃんが可愛いです……!
ミュージシャンを夢見て上京した和菓子屋の一人息子・和(なごむ)。10年後、自身のバンドが解散となり夢破れ落ち込んでいたところ、父親が入院したという報せを受ける。「この味を絶やさないよう、俺が『緑松』(りょくしょう/和菓子屋)を継がんと!」と一大決心。京都へ戻る。
だが、父親の入院は命に関わるものではなく元気に退院していたため、跡継ぎでありながら勝手に家を出て行き、今更戻ってきた和に、父親は激怒。さらに「跡継ぎはもう決まってる!」と。その跡継ぎは小学生の女の子、一果だった。
父子家庭だった一果は、一年前、「緑松」に置き去りにされ、居候として生活していた。父親は行方不明となり、連絡がつかない。それでも弱音を吐かず気丈に振る舞う一果を見かねて、和の両親は一果を家族同然に迎え入れていた。
そうして、一果(10歳)と跡継ぎ争いをすることになった和(30代前半)。一果は自身の父親もバンドマンであり、自分を置いていったことと、和が跡継ぎでありながら東京に行った「無責任さ」を重ね、和にキツく当たる。
一方で和は、一果の生い立ちや、跡継ぎになろうと頑張っている様子を見て力になりたいと、一果の冷たい視線を浴びながらも、「父親代わり」として何かと世話を焼く。
能天気で明るい和は、和菓子作りの修業をしながら日々緩やかに成長し、また一果も、和と和菓子と関わっていくことで、ちょっとずつ心に変化が生まれて……。
京都の空気を感じつつ、一生懸命で大人びているけど、素直になれない一果ちゃんの可愛さに胸を打たれつつ、お調子者の和に笑いつつ、家族って大切だなぁとほっこりできる物語である。
さらに、和と一果の関係だけではなく、和の東京での元カノや和に淡い恋心を抱いているバイトの美弦(みつる)も登場し、そちらの三角関係も気になるところ。
個人的イチ押しは元カノの佳乃子(かのこ)さん。和菓子屋を継ぐため、自分を捨てた和を恨めしく思いながらも未練があり、結局京都に住むことになる。
彼女も素直になれない系女子なので、和は「なんでこいつは俺をフッたくせに(と、和は勘違い)京都にいるんだ……!?」と不思議に思っている。このお互い好意はあるのに、ぎくしゃくしている二人の関係性、かなり好きなので、もっと描いてください浅野先生…!
一果の母親が現れたり、行方不明の父親が(一果たちの知らない所で)登場したりと、和菓子と和と一果の生活も長くは続かないのかもしれない。そちらの展開も大いに気になるのだが、二人の「本物じゃないけど、本物になろうとしてがんばっている父娘関係」をいつまでも見続けていたいとも思う。ほっこり、しました。
文=雨野裾