没後50年に蘇る!チェ・ゲバラと共に生きた若き日系人・フレディ前村を知る3冊の道標
公開日:2017/10/11
道標2 ノベライズ:ひたむきなフレディの人生の陰影を繊細に描き出した感動作
フレディ前村を知る次の道標は、原案本と阪本順治監督の脚本を、映像作品のノベライズに定評がある作家・豊田美加が丁寧に小説として再構成した『映画ノベライズ エルネスト〈もう一人のゲバラ〉』である。
映画のエピソードを取り上げることはもちろん、それにいたる前後も補完され、登場人物の心の動きや時代背景などが、小説ならではの繊細さで細部まで描かれていて、物語により深い陰影を刻んでいる。
たとえば、映画でも清らかに表現されていた、フレディと学友のルイサの間でかわされる情感豊かなシーン。フレディの感情の揺れを知ると、切なさは倍増である。そして、革命に命を散らしたフレディが、誠実な美しい恋をしていたことに、どこか救われた気持ちにもなるのだ。
道標3 オフィシャルブック:キャスト、監督が映画を語る。豪華寄稿は、海堂尊、安彦良和ほか!
さらにフレディを知り、映画をより深く楽しむために、おすすめなのが、オフィシャルブックだ。
とりわけ、映画の裏側にある作り手たちの熱をリアルに感じることができるロングインタビューは必読だ。オダギリジョーが語る、2カ月に及んだ過酷なキューバロケの詳細な様子や、フレディやゲバラに対する考え。阪本順治監督は、「もし自分だったらどうしたか、考えてもらえればうれしい」と映画に込めた思いを明かす。
豪華な特別寄稿は、現在ゲバラの生涯を連作で執筆している海堂尊をはじめ、描き下ろしイラストを寄稿している安彦良和など、多彩な顔ぶれが映画の魅力を伝える。
映画の時代背景の詳細な解説や、ゲバラの名言集、貴重な撮影時のオフショットも収録。
特別寄稿 安彦良和
2012年に朝日新聞出版社から、「マンガ世界の偉人」というシリーズでチェ・ゲバラをマンガで書いてくれないかと言われました。
24Pの短編マンガでしたが、ゲバラはとても興味をもっていた人物でしたし、当時たまたま、そのゲバラと共に戦った日系人フレディ前村さんを知っていたので、ゲバラとフレディのかかわりという視点で物語を描きました。
それから5年が経ち、その時に自分が描いたゲバラのマンガの中のフレディのストーリーを阪本監督が映画化をしたと聞き、今回のお話しを縁と思い、ご一緒させていただきました。
映画は彼の医学生時代がメインで、フレディの青春映画としても楽しませて頂きました。フレディ役を演じたオダギリジョーさんが日本人離れした容姿なので、見事に日系二世フレディを演じられていて、流暢なスペイン語も素晴らしく、さすがだと思いました。
やすひこ・よしかず●1947年、北海道生まれ。虫プロを経てフリー。アニメーターとして『機動戦士ガンダム』ほか多くの名作を生み出す。専業マンガ家に転身し『アリオン』でデビュー。歴史ものを中心に精力的に作品を発表し続けている。主なマンガ作品に、『ナムジ 大國主』『王道の狗』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』など。
取材・文:波多野公美 写真:川口宗道(阪本順治監督)