衝撃! 一般的な健康診断や人間ドックでは初期がんは見つからない? 本当に正しいがんの見つけ方

健康

公開日:2017/10/10

『難しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください! 』(水上治、大橋弘祐/文響社)

 日本人の半分以上がかかるという「がん」。多くの人ががんに苦しめられているにもかかわらず、これほど多くの治療法や予防法などさまざまな情報があふれている病気もないだろう。

 なぜがんにかかる? 本当に良い治療法とは? がんを恐れる理由をまとめれば、このふたつに絞られると言っても過言ではない。しかし、こんなシンプルな質問になかなか的確な答えを見つけられずに右往左往する人は多い。

 この答えに的確に応えてくれる医師がいる。がん専門医の水上治氏だ。水上氏は、外科、消化器科、終末医療など細部に分かれているがん治療を統合的に診断し、患者の立場に立った医療を提供している。この度、『難しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください! 』(水上治、大橋弘祐/文響社)という、がんの基本的情報から、最前線治療までを分かりやすく網羅した書籍を出版した。

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■会社の健診で初期がんは見つからない

 この書籍を読んでショックを受ける人は多いだろう。まずなにより、会社や自治体で実施されている一般的な健康診断や人間ドックでは、初期のがんを発見できないということだ。

 例えば会社の健診で多い、バリウム検査。これは潰瘍型の胃がんがあると、へこんでいるため、そのくぼみにバリウムが溜まる。胃のシワにバリウムをこびりつかせて、X線で撮影する検査だ。

 しかし、初期の胃がんは凹凸がなく、ただ「赤くなっている」だけのものもある。するとバリウムが通り過ぎてしまい、見過ごすこともあるという。同様に肺のX線検査や、大腸の潜血検査だけでは見逃すことも多いという。

“がんは恐ろしいことに症状が出てから病院に行くとほとんど進行がん。だから定期的に検診を受けるしかない。でも、日本のがん検診の受診率は極端に低い”

 水上氏は、がんは見つかってからでは遅いという。そのため、「初期のがん」を発見するための「専用の検査」を受けなければいけない。これには、残念ながら自費で検査を受けるしかない。

 しかし、自費の診療には様々な種類がある。またそんなに予算を潤沢にかけられる人もいないであろう。そこで水上氏は次の3つを重点的に検査を受けるとよいという。

 日本人を死に至らしめる三大がんは、男女ともに、「肺がん・胃がん・大腸がん」だ。この3つの検査をすることで、死因となる約4~5割のがんの早期発見をできることになる。

 初期がんに有効な検査は次のようなものだという。

がんの検査方法と予算の目安
・肺のCT検査 1~1.5万円
・胃の内視鏡検査 1.5~3万円
・大腸の内視鏡検査 1.5~2.5万円
・肝臓、胆のう、すい臓、腎臓の超音波検査 3000~5000円

 50歳までは2年に1回。50歳からは、1年に1回、3大がんの検査に、肝臓などの超音波検査を受けておけば、だいたいのがんは網羅できる。

■治療は最初の一歩が大事!

 しかしこのように、検査を受けたからと言って、安心できないのががんである。「どんなに細かく検査してもがんを発見できないこともある」と専門医の水上氏は言う。

 ではがんを発見してしまったらどうすればいいのか。

“がんと診断されたら、セカンドオピニオンは必ずもらったほうがいい。なぜなら、がんは最初の治療をしてしまうと、後戻りがほとんどできないから”

 がんの治療法は主に「手術」「放射線治療」「抗がん剤」の3つ。それぞれにメリットデメリットがあり、どれも治療を進めてしまったら別の治療法に乗り換えることは難しい。だから最初の治療は慎重に選択した方が良いという。

■目の前の医者がすべてではない

 では何が最良の治療法なのか。水上氏はこんなことも言っている。

“欧米では最初のがん治療は6~7割は放射線治療をするけど、日本人は2~3割しかいない…
手術をすすめられたら、放射線医にセカンドオピニオンをもらう。逆に放射線をすすめられたら外科医にセカンドオピニオンをもらうこと。最初の診断とセカンドの意見があまりに違って迷うならサードオピニオンをもらうこと”

 日本の医学界では、外科医が力を持っていることが多く、悪気なしにすぐ手術をすすめることが多いのだという。だがここで疑問に思うこともあるだろう、進行がんの場合、一刻も早く手術した方がいいのではないかと。

 ここも水上氏は、冷静な判断のヒントをくれる。「よほど進行したがんでないかぎり、1か月くらい待っても大丈夫」とのこと。がんと告知されてもパニックにならず、いくつもの手段を模索し、納得のいく治療をするべきだと説く。2017年現在は、上記の3つの治療法が主流だが、本書では「免疫療法」という第4の治療法も紹介している。

 本書にも書いてあるとおり、「絶対に治る」「これだけすれば」というような治療法や予防法はありえない。将来のがんを恐れている人にまず必要なのは正しい知識だ。水上氏からがん治療のリテラシーを学んでみてはどうだろうか。

文=武藤徉子