妻にバレたら離婚必至!? 出社を装いライブ参戦、アイドルグッズはタンスの裏に隠す……隠れオタの日常

マンガ

更新日:2017/11/6

『堂々とアイドル推してもいいですか?』(小城徹也/KADOKAWA)

 アイドルオタク=気持ち悪い。こんな認識を持っている人は、まだ少なくない。そんな世間の冷たい目線から逃れるように「隠れオタ」として活動している人たちの生態とは、いったいどんなものなのだろうか。『堂々とアイドル推してもいいですか?』(小城徹也/KADOKAWA)の主人公・緒上崇(おがみ・たかし)は、まさにそんな隠れオタ道、通称「けもの道」を突き進むサラリーマン。彼の日常からは、その涙ぐましい努力と苦労がうかがえる。

 崇がハマっているのは、女性アイドルグループ「あらたな☆チューズ」。そのファン=荒武士として、日夜オタ活動に邁進している。……が、彼には一つ気を使わなければならないことがある。なぜならば、大のアイドル嫌いである妻がいるから。そして彼女はアイドルオタクに対して、「いい歳したオッサンが少女に群がってみっともない」「年相応の趣味を持てない精神年齢低レベル共が!!」「疑似恋愛にのめり込み過ぎて金ヅルにされている事に気付いていないの!?」と、破壊力抜群の侮蔑を投げかけるのだ。挙句の果てには、アイドルオタクとは離婚する、なんて発言すら飛び出す。それゆえに崇は、隠れオタとして活動することを余儀なくされてしまう。

 本作の見どころは、そんな妻に隠れて崇が涙ぐましい努力をしているところ。まるでステルスゲームのように、オタ会に参加することをごまかし、アイドルグッズを隠し通し、それでもなんとかライブに参戦する。バレるかバレないかの瀬戸際で闘う崇の姿が滑稽で笑いを誘うのだ。

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 さらにもう1点。それは、アイドル用語が満載な点だ。「他界=ファンを辞めること」「ガチ恋=推しのアイドルに本気で恋をしていること」「全握=グループ全員と握手の略」「干す=イベントに行かないこと」などなど……。これらの用語が自然と登場し、理解できるようになっているので、まるでオタ活にまつわる辞書のようだ。事実、この一冊を読んでオタ用語とオタの生態を深く理解することができた。なんて実用的!

 ラストエピソードでは崇がなぜアイドルに夢中になったのか、その経緯がすべて明かされている。そして、そのエピソードが実にグッとくる。オタクに理解がない人も、もしかしたらその考えを改めようと思うかもしれないくらいだ。

 理解できない物事を遠ざけてしまうのは損なもの。本書でぜひ、オタの生き様と向き合ってみてもらいたい。

文=五十嵐 大