セックスレス、すれ違い…“男女関係の悩み”は原因を探っても意味がない理由とは?
更新日:2017/10/14
「男は(女は)ズルい、信用できない」という考えが心のどこかに残っていて、恋愛が上手くいかない。そんな経験をするたびに、「やっぱり自分はダメな人間だ」と自己嫌悪に陥ってしまう……。
絵に描いたような負のスパイラルだが、そんな思考のクセのせいで、恋愛や結婚生活で苦労している人は多いはずだ。
そんな人達に対し、「人は変われる」「長年の思い込みも消すことができる」と力強く断言し、世界で大きな支持を得ているのが、アルフレッド・アドラーのアドラー心理学。日本でも『嫌われる勇気』がベストセラーとなったことで、その人気は高まっている。
『男と女のアドラー心理学』(岩井俊憲/青春出版社)は、そのアドラー心理学を通じて、男女間のすれ違いを考察・解決する一冊だ。
恋愛や結婚生活の悩みが解決できない人は、その原因を探ったり、過去の出来事を振り返ったりする中で、ついネガティブ思考になりがちだ。「原因がどこにあるか?」「どちらが悪いか?」と考えた挙句、「あのときの自分の行動が原因だ」「自分より相手が悪い」などと決めつけて、絶望や怒りが増幅する……というのはありがちなパターンだろう。
一方、アドラー心理学では、「過去や原因を探っても事態は解決しない」と考える。そして、個人の主体性を重視しながら、ポジティブに未来を見つめる。だからこそ、本書で紹介されている男女間の悩みの解決策はシンプルだ。
過去の原因にはとらわれない。お互いの関係をよりよくするため、自分に何ができるか考える。自分から先に相手を信頼・尊敬することで、相互尊敬・相互信頼を育んでいく。そして相手のことを理解しようと試み、相手と話し合うという、適切なコミュニケーションをとっていく……。
こう書いてみると、至極真っ当でシンプルな方法なのだが、人はなかなかそれを実践できないし。そして男女はすれ違ってしまう。本書では、「なぜその実践ができないのか」「実践するためには何をどう考えるべきか」も詳しく解説されている。
また、「愛」というものへの考え方も独特で面白い。本書で紹介されているアドラーの弟子、ルドルフ・ドライカースが「愛」について残した言葉は以下のようなものだ。
愛とは、感情というよりは、うまくいっている人間関係の副産物である。
「彼は私を愛しているんだろうか」「オレは彼女に対する愛が足りないのかも……」なんて考えても、思考はグルグルと停滞してしまいがちだが、上記のような考え方なら解決策はシンプル。目の前の人間関係をしっかり構築すれば、自然と愛を育んでいくことができるのだ。本書で提示されている行動は「言うは易し行うは難し」なのだが、その背景のロジックを学ぶことで、行動に踏み出す勇気は確実に得られるだろう
文=古澤誠一郎