スポーツ選手だけじゃない、人生に効く考え方とは!? 元プロ野球選手の公認会計士・奥村武博にインタビュー【後編】
公開日:2017/10/27
1998年に土岐商業高校からドラフト6位で阪神タイガースに入団した奥村武博氏。しかし、度重なる怪我によって2001年に戦力外通告を受け、現役引退することに。
引退してからは紆余曲折を経て、9年かけて公認会計士の資格試験を受ける。その当時の様子や詳細な勉強方法が記されているのが『高卒元プロ野球選手が公認会計士になった!』(奥村武博/洋泉社)だ。
インタビュー前編では公認会計士を目指すに至ったきっかけや、9年間の資格勉強で得たことについて。後編では実際に公認会計士としてどのような仕事を手がけたのか、そして今後の夢について語ってもらった。
◎数字を通して人の気持ちに想いを馳せる!?
――公認会計士のお仕事としての魅力とはなんでしょうか。
奥村:会計士になった後に描けるフィールドの広さです。上場企業や投資ファンド、地方自治体、医療法人などでも、監査で公認会計士の出番があります。他にコンサルティングや会社を上場させるために会社の内側で活躍する方もいますし、国会議員や区議会議員をやっている方も。自分がこうやりたいって思って、やればやるほど世界が広がっていく仕事が公認会計士だと思います。
――これまで監査法人でお仕事をされていたとのことですが、監査の仕事をやってみていかがでしたか。
奥村:楽しいですよ。色々な会社を訪れて、色々な会社の仕組みを見ることができるのも魅力の一つです。例えば、転職して色々な会社を知ろうとしても限界がありますよね。でも、公認会計士は大小20社以上の会社を見ることができますし、取締役会の議事録を見る機会や、取締役の方とか経理部のマネージャー・部長クラスの方々とお話しする機会もあるので刺激になります。
――これまで仕事を通して、スゴイなって思った発見はありましたか?
奥村:会社を興した創業者の方々はスゴイんだなって感じました。ビジネスの発想や目の付け所とか感銘を受けましたね。あとは、大きな会社になると「1億、2億の誤差はそんなに大きな誤差じゃない」っていう感覚がビックリしました。個人ではそんな大金を動かすような取引はしないですから。
――なるほど。日々発見があるお仕事なんですね! 監査の仕事で一番面白いと感じる瞬間はどんな時ですか?
奥村:僕は会計の数字の部分が好きなんです。数字っていうのは人の活動の成果を表しているもの。だから数字を通じて、その数字に携わった人たちの気持ちに想いを馳せてしまうんですよ。そうすることで、会社に携わっている人たちのことを深く理解することができたと感じることができます。そんな風に、数字を通して会社の理解が深まった瞬間が面白いですね。
◎現役のスポーツ選手は人生で通用する考え方を身につけよう!
――今思い返してみて、プロ野球選手の生活ってどうでしたか。
奥村:後悔しかない。もっとできることがあった、こうしとけばよかったって。今の頭のまま、知識のままなら全然違う取り組みができたと思います。
――具体的にはどういった取り組みができると思いますか?
奥村:やっぱり僕は肘と肩の怪我で引退したんで、身体のケアですね。あと、普段の練習も考えながら取り組むことで、選手としてパフォーマンスも向上したと思います。それに、意味や目的を考えながら取り組むという姿勢は、引退後、全く違うキャリアを歩むことになっても必要になる。もしあの時、そういった姿勢で取り組めていたら、自然と将来のキャリアに対する備えができたんじゃないかな。
――当時も別に考えていなかったわけではないですもんね。
奥村:そうですね。考えのベクトルというか、考えるポイントがずれていたんじゃないかな。やっぱり、この考え方っていうのを今後選手たちに伝えていきたいです。
――引退した後の選手たちのセカンドキャリアのためにですか?
奥村:はい。僕はよく野球選手として活躍する期間と、引退後の人生を並行して考えようという“デュアルキャリア”って話をします。別に現役の時に「資格の勉強をしろ!」ということではなく、もっと物事の本質を考えながら、目的に合わせて手段を選ぶということ。当たり前のところに高い精度を求めていく。それを通じて、人生で通用する考え方を身につけていくのが“デュアルキャリア”の一つだと思うんです。
現在は、スポーツ選手の資産のマネジメントやセカンドキャリアのマネジメント、同時に講演会で“デュアルキャリア”などについて話しているそう。公認会計士となり、自分がやりたいことに次々とチャレンジしている奥村さん。公認会計士という資格が、望む未来へ翔るための翼になっているように感じた。
文=冴島友貴
<著者プロフィール>
2001年にプロ野球選手引退。その後、飲食業などを経て、日本初の元プロ野球選手の公認会計士となる。現在は、一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構 代表理事、税理士法人オフィス921・株式会社オフィス921スーパーバイザー、優成監査法人非常勤職員として活躍。